◆ 2005年3月10日、川崎市高津区下作延。こんな偶然があるのだろうか? もちろんあるのである。べつにたいしたことではない。きのう読んだ本にホオズキにかんする記述があって、そのことをあれこれ考えながら歩いていたら、道端になぜだかホオズキが落ちているのを見つけた。いかなる天の配剤かはしらないけれど、もっけのさいわい、これをイメージ写真に利用させてもらうことにして・・・
◇ ホオズキ (鬼灯) の茎に交尾したカメムシがズラリと一列に並んでついているのを見たことがあるだろう。このカメムシはホオズキカメムシといってホオズキが大好きなのである。ところで、ホオズキというの名の語源は 「頬付」 ともいわれるが、もう一つの説がある。それは 「ホオ付」 であって、この場合のホオはカメムシの古名である。つまり、ホオズキという植物は、ホウ (カメムシ) がたくさんついているから 「ホオズキ」 となったというのである。
青木淳一他編著 『虫の名、貝の名、魚の名』(東海大学出版会,p.34)
◆ この語源説にしたがうなら、ホオズキカメムシとは、「カメムシがたくさんつく植物につくカメムシ」 の意味であることになって、なんのことやらわからない。こういうのを修辞学の用語で 「冗語法」 (英 pleonasm,仏 pléonasme) と呼ぶ。たとえば、「馬から落馬する」 といった表現がそうであり、同じ意味をもつコトバがひとつの表現のなかに複数あってダブっているわけで、「同義語反復」 (英 tautology,仏 tautologie) に近い。
◆ そんなわけで、植物の名前で、冗語的なものはほかには・・・というようなことを歩きながら考えていたのである。たとえば、トウモロコシはどうか。
◇ そもそも、『トウモロコシ』 というネーミングそのものがフザケていて、『トウ=唐』 & 『もろこし=唐土』 で、結局 『中国から来た』 という程度の意味でしかないようです。
marukyo.exblog.jp/495384/
◆ トウモロコシは唐唐土ではないという説もある。もっとフザケているのは、「オミオツケ」 (御御御付) で・・・、いや失礼、オミオツケは植物の名前ではなかった。削除(また、オミオツケは御御御付ではないという説もある)。
◆ 「リンゴの木」 と言ってもべつにおかしくはないが、「リンゴの木の木」 ではさすがにへんだろう。「ハナミズキの木」 と書けば気にならないが、「花水木の木」 とは書きにくいだろう。「楠」 という漢字は 「クスノキ」 と読ませることもあるが、「楠の木」 と書いて、これはなんと読むのか。「クスノキ」、それとも 「クスノキノキ」 ?。では、「ケヤキの木」 はどうだろう。
◇ 語源は、「(他のものと比べ) 異様だ」 「際立っている」 から転じて 「素晴らしい」 という意味を持つ古語 「けやけし」 から来ている。すなわち、「けやけし木」 素晴らしい木という意味。
news7a1.atm.iwate-u.ac.jp/~uforest/keyaki.htm
◆ あるいは、ヒノキは? ヤナギは? スギは? いろいろあるけれども、木の名前の末尾についている 「キ」 や 「ギ」 はもともと 「木」 の意味であることが多いので、さらに「~の木」を加えると、すこし冗長な感じがする。ではサツキは? ヤマブキは? これらの 「キ」 は、あいにく 「木」 とは関係がない。