◆ 2005年3月4日、浦安市堀江。東京に雪が降った。千葉にも降った。たぶんよそでも降っただろう。ところで、この犬、ヘンなハナシで申し訳ないが、ウンコをしようとふんばっていたのである。出たかどうかはわからない。
◆ 雪の上で野糞をしたことがあったような気がしてならない。山の中だっただろうか? だぶんそうだろう。でも、いつどこの山で? もしかすると街の中だったかもしれない。そんなことはなかったと思いたいが、断言はできない。雪の情景は時間と場所とをアイマイにしてしまうから。
◆ 雪の上ではないが、べつなとき、だれもいない山で野糞をしたことがある。だれもいないはずだったのに、まさにそのとき登山者がワタシのすぐわきを通り過ぎた。ワタシがしゃがんでいたところは、あまりに登山道に近すぎたのだった。なさけない顔をしてワタシはその登山者を見送った。ワタシの表情は おそらく「うんこをしているところを人に見られたときの」 犬そっくりだったと思う。
◆ 矢野顕子のたぶん 『ごはんができたよ』 というアルバムのたぶん 「DOGS AWAITING」 という犬のことを歌った曲があって、その歌詞にたぶん 「うんこする時は前を向く」 というフレーズがあった。あるいは 「前を見る」 だったかもしれない。確かめようと、ネットで検索してみたけれど、うまく見つからない。カセットテープがあったなと思って、探すと出てきた。けれども、カセットを再生する装置がなにもないのだった。いや、あるけど壊れてる。それにしても、どうしてうんこの歌詞なんかを思い出そうとしているのだろう。
◆ 保育園に通っていた遠いむかし、自宅の玄関前でうんこを垂れたことがある。これはいまでも忘れない。やばいと保育園から走って帰って、もう少しで救われるところだったのに。ここまで来ればもう安心と、すこし緊張を解くのが早すぎた。
◆ 3月4日、東京に雪が降った。千葉にも降った。白い雪の記憶はなぜだかすっかりうんこまみれ。みんなあの犬のせいだ。