MEMORANDUM

  三冊百円文庫本

◆ 1月13日、高円寺の古本屋で3冊100円のカバーなし文庫本を買った。今井通子 『続私の北壁』(朝日文庫)、山根一眞 『変体少女文字の研究』(講談社文庫)、日本ペンクラブ編 『ことばよ花咲け』(集英社文庫)の3冊。まあ、どんな本にだって33円ぐらいの価値はあるもので、

◇ 「そっちは五リラ」 / 「おお、ゴリラか」 / 「いやちがうぜ、クジラが書いてあるぜ」 / 「イルカじゃないか」 / (イタリアのリラ、その五リラのコインにはイルカの絵が書いてある)
『続私の北壁』, p.48

◆ これは1969年のハナシだが、このころは5リラなんてのがまだ流通してたのか。イルカの5リラコイン、いちど見てみたかったな。

◇ 昭和五八年四月、東京都内にある高校に入学したその少女は、奇行の持主だった。 / 学校に来ている間は、色とりどりのマーカーやサインペンを机の上に走らせることにしか興味をもっていなかった。机の上はキャンバスと化し、ペンギンやカモメ、ヤシの木、雲などのトロピカル風の絵と変体少女仮名が綾なす“作品”の完成に夢中だった。 / 注意を受けても「わかりました」と言うカラ返事で、自分の机に描く場所がなくなってからは他の生徒の机、窓ガラス、教室前の廊下に置かれたロッカーにまで描き始めた。 / 遅刻やエスケープの常習者で成績も進級の基準に満たなかったこの少女は、六〇年三月に自主退学していったが、〔・・・〕
『変体少女文字の研究』, p.108-109
◆ この少女はいまではどうしているのやら。『ことばよ花咲け』 は大岡信が編んだ詩のアンソロジーで、なかでも天沢退二郎の 「街について」 という詩が気に入った。

◇ 町かどを曲がったすぐ向うにときどき
  神さまがいそうな気のすることがあって
  行ってみると少し雲が高くなっていたりする街がいい

『ことばよ花咲け』, p.333

◆ 以上で、100円分の価値はあるだろうから、これで心置きなくゴミ箱行き。

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