◆ 今日たまたま歌舞伎座の前を通りかかった。「八月納涼歌舞伎」とかで、演目に通し狂言「東海道四谷怪談」などあり、浴衣の女性も多数見受けられて、思わず入っちゃおうかなと思ったが、仕事中なのだった。ところで、歌舞伎座では興行の最終日のことを「千穐楽」と書く慣わしである。 ◇ 普通「センシュウラク」といえば「千秋楽」と書きますが、芝居の世界では「秋」ではなく「穐」の字が使われています。その昔、江戸の町はしばしば大火に見舞われ、そのたびに芝居小屋も焼失を繰り返したため、「火」の字を嫌って、めでたい「亀」の字の入った「穐」が使われるようになったといわれています。 ◆ この見慣れない「穐」の字は「秋」の異体字で、大学教授の穐田(あきた)さんが自身のサイトに《「穐」の字について》という一文を書いておられるので、そこから引くと、 ◇ この字は、私の「穐」の下に点四つ(れっかという部首)がついた字が本来の字でした。この「れっか」は「火」を意味しています。つまりこの字は、亀の甲羅を火であぶって作物の出来・不出来を占う行為を表しており、そのような行為をする季節である「あき」を示すものとして、用いられてきたわけです。ここまで来るともうおわかりでしょう。「秋」の字は「亀」の部分が除かれて「のぎへん」と「れっか」が残ってできた字ですし、一方「穐」の字は「れっか」が除かれて「のぎへん」と「亀」が残ってできた字です。 ◆ ワタシも、引越のお客さんとして、一度「穐田さん」に出会ったことがあるが、ふりがながなければ、おそらく読めなかったと思う。「穐山さん」でも、それは同じこと。 ◇ ぼくの苗字は「穐山」と書いて「あきやま」と読みます。〔中略〕 でも、はじめて会った人はふつう読み間違えます。それが国語の先生で、「い」ではじまる人より出席番号がはやいのが一目瞭然でも、 なんの躊躇もせず「かめやまー」と呼びます。これまでの人生のなかで、はじめてでも間違えなかった人をぼくは2人しか知りません。 ◆ とにかく、漢字は難しい。穐田さんも難しいが、渡辺(渡邊・渡邉)さんも難しい。『徒然草』136段の「塩(鹽)」のハナシも難しい。 |
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