◆ 引越当日、引越屋が来て、作業中に、こう言ったとする。どうやら、タンスかなにかを運び出そうとしているらしい。 ◇ ぞうきん、ありますか? ◆ あなたなら、なんと答えるか。「ありません」? これは問題外だ。生活そのものを見直したほうがいい。とはいえ、こういうひとも案外多いようで、「ふつう」なら雑巾を使うべきところも掃除機を使ってしまっているので、雑巾がそもそもないのである(これは女性に多い)。もちろん、掃除をまったくしないから、雑巾が必要ないというひともいるが(これは男性に多い)。 ◆ 「ありません」と答えられた日には、仕事をやる気も失せてしまう。そこらへんに落ちている(見つけるのに造作はない)布切れ(Tシャツでも可)を拾って、ホコリを適当に払って(もちろん自分が汚れないためである)、運ぶ。 ◆ 「ぞうきん、ありますか?」にたいする対応でいちばん多いのが、雑巾を持ってきて、「はい、どうぞ」というパターンである。とくに問題はない。これまた、適当にホコリを払って(やはり、自分が汚れないためである)、運ぶ。 ◆ しかし、引越屋(すくなくともワタシが)が「ぞうきん、ありますか?」と聞くときには、まったく違う答えを期待しているのである。お気づきでいらっしゃらない方も多いだろうから、お教えしよう。 ◇ あっ、すいません。汚れてましたか? いま拭きますから。 ◆ これである。こういう対応のできるひとも少なからずいる(いや、少ないかな)。そう言われた場合には、 ◇ いやいや、こちらで拭きますから。 ◆ という流れになって、はじめて、自分のためだけでなく、そのお客さんのためにも、いくぶん念入りに、ホコリを拭き、汚れを落として、運び出す。 ◆ げに日本語は難しくもあり。 |