◇ 著名な政治家すら、もっぱら司馬遼太郎などの小説を愛読書とし、その知識で歴史を語りがちである。尊敬する人物が坂本龍馬だという人のほとんどは、『竜馬がゆく』の主人公のことを語っているにすぎないし、ユニークな用心棒集団に過ぎない「新撰組」が青春のヒーローや英雄のように扱われるのもばかげている。 ◆ これを書いたのは元通産省の役人で、日本の政治家にたいする苦々しい思いが透けて見えるような気がしないでもないが、これには同感である。政治家たちは、ことのほか司馬遼太郎がお気に入りなようで、個人サイトのプロフィールから愛読書をいくつか拾ってみると、 ◇ 〔静岡県議会議員:1967〕 司馬遼太郎全般(政治を志すものにとっての教科書) 〔岡山県議会議員:1968〕 司馬遼太郎もの 中でも「国盗り物語」「世に棲む日々」 〔衆議院議員(女):1953〕 司馬遼太郎:「この国のかたち」「21世紀に生きる君たちへ」 〔参議院議員:1949〕 司馬遼太郎『街道を行く』 〔衆議院議員:1950〕 三国志(吉川英治 著)、竜馬がゆく(司馬遼太郎 著) 〔衆議院議員:1939〕 「故郷忘じがたく候」、「坂の上の雲」等、司馬遼太郎作品 ◆ この最後のひとは、経歴に「京都大学農学部卒業(応援団長)」とある。なんなんだろう、この「応援団長」ってのは! それはさておき、司馬遼太郎を愛読書とするのは、自民党の議員に多い印象があるが(上のリストでは政党名を入れ忘れた)、そんなことはないのかもしれない。 ◇ 小泉も菅も、主要な愛読書に司馬遼太郎をあげている。奇しくもふたりは『坂の上の雲』を一番にあげ、小泉は東郷平八郎と秋山好古、真之兄弟、菅は児玉源太郎を贔屓(ひいき)にしていると言う。菅は今回の選挙に立候補した長男に、源太郎と命名したほどだ。 ◆ おそらく、政治家と並んで、企業の社長やなんかも司馬遼太郎ファンが多いと思うが、面倒なので調べるのは止めておく。これはなにかというと、おそらく自分を司馬作品の主人公に重ね合わせているのであって、オメデタイというほかない。小説の読みかたとしては、下の下であると思うが、当人たちには余計なお世話であろう。 ◆ ワタシはといえば、司馬遼太郎はキライではなくて、といっても小説はあまり読んだことはないが、『街道をゆく』はよく読んだ。 |