◆ いま「QUESTIONS」で、「好きな樹木は?」というアンケートをやっている。これまでのところ、サクラが圧倒的な一番人気で、これは予期していたこととはいえ、その人気の所以は花の部分にあるのは間違いないので、これでは「好きな花は?」と聞いているのと変わりがない。 ◆ そんななか、ナギと回答された方がいる。よく知らないので、まず「goo 辞書(「大辞林 第二版」)」で調べてみた。 ◇ マキ科の常緑高木。高さ20メートルに達する。暖地の山中に自生、また庭木とされる。葉は対生し、楕円形で革質、多数の平行脈がある。雌雄異株。五、六月開花。果実は球形で、晩秋、白粉を帯びた青色に熟す。古くから神社の境内に植えられ、熊野神社では神木とされ、その葉に供物を盛る。また、その葉が切れにくいことから、男女間の縁が切れないように、女性が葉を鏡の裏に入れる習俗があった。ナギノキ。力柴。漢名、竹柏。 ◆ 熊野神社は全国各地に三千以上もあるそうだが、そのひとつ、横浜市にある師岡熊野神社のホームページを見ると、 ◇ 梛の木、これはもともとが熊野信仰のご神木であります。いわゆるイザナギのナギであります。熊野信仰は海洋族の神様の信仰です。むろん海は凪(なぎ)の状態が一番嬉しい。つまり、ナギをもって海を鎮める、それでナギの木がご神木というわけであります。 ◆ なるほど、イザナギのナギか。たしかに熊野三山のひとつ熊野速玉大社の主祭神は熊野速玉大神で、これはイザナギノミコトのことと云われている。そしてこの熊野速玉大社には日本一のナギがある。 ◇ 参道には平重盛が植えたというナギの老樹がそびえる。幹周り6m、高さ20mもあり、ナギでは日本一といわれ、天然記念物に指定されている。このご神木に海上安全を祈願する漁師も多い。 ◆ 熊野速玉大社の所在地は和歌山県新宮市で、新宮市の「市の木」がナギ。 ◆ そんなこんなで、これからはどこかの熊野神社に寄る機会があったら、ぜひぜひナギを探してみたいと思う。あちこちに巨木があるようだから。これは熊野神社とは関係ないけれど、鎌倉の鶴岡八幡宮のホームページにもナギの記述があって、源実朝の歌が引用されていたので・・・ ◇ 「み熊野のなぎの葉しだり雪降れば神のかけたる四手にぞ有らし」 ◆ 学名は Podocarpus nagi で、日本語のナギがそのまま種小名になっている。また日本語ナギの由来はというと、 ◇ 和名は、葉の形がミズアオイ科のコナギ(古名ナギ)に似ているためとされる。 / 古くから神社に植えられ神木ともされる。アレロパシー(他感作用:特定の植物が出す物質が他の植物に及ぼす作用)があり、奈良の春日大社ではナギの優占林が見られる。 ◆ アレロパシーとはなんぞや、ということが気になって、またハナシが終わらなくなりそうな・・・。 ◇ ナギは、他の植物の生育を抑制する働きをもつナギラクトンという化学物質を分泌するそうです。 / 葉の丈夫さや他の植物の生育を抑制する力をもつことからナギの葉は魔除けのお守りにされるようになったのかもしれません。 ◇ 奈良の春日大社の近くにはナギの純林があるそうですが、他の植物の侵入を防いだのも、シカの食害を防げたのも、ナギラクトンという化学物質の影響だそうです。 ◇ このナギが、春日山原始林を侵略中だ。照葉樹などを駆逐し、ナギが優占しつつある。ナギはナギラクトンという物質を放出し、ほかの植物の生育を阻害するからだ。 ◆ 熊野神社のみならず、春日大社もまたナギが御神木だったとは! |