MEMORANDUM

  店員さんは心を明るくしたか?

◆ 電車に乗るときなど、なにも読むものがないと困るので、旅行のパンフレットやら自治体の広報誌やら各種のフリーペーパーやらを、駅付近で調達してから改札を通ることが多い。先日、東急用賀駅から乗車する際には、近くの書店から『月刊仕事の記録帖』(文明出版社)という冊子を頂戴した。置いてあったのは2002年の3月号で、表紙のタイトルの上には「自己を磨く喜び・お客様に喜ばれる喜び」とあり、どうやら店員向けの雑誌のようである。中身は日記の体裁で、その日の目標その他を書き込むように作られていて、毎日のコラムも付いている。電車内でパラパラ読んでいると、3月12日は「心を明るくした店員さん」という文章だった。以下はその全文。

◇  Fさんは、テレビが古くなり映りが悪くなったので、新しいテレビを買うことにし、近所でも評判の電気店に頼みました。
 電気店からは年配の店員さんが来て、テレビをセットすると、「すみませんが、お湯をちょっといただけませんか」と言います。「手を洗うんですか」と聞くと、「いや、蛍光灯が少し汚れているようですので、拭かせていただこうと思いまして」と言って、お湯に持っていた薬品を入れ、蛍光灯を拭き始めました。そして、蛍光灯を拭き終えると、「ほかの電気器具はどうでしょう」と言いながら冷蔵庫やトースターなども拭き始め、部屋にある電気器具を全部きれいに拭いてしまいました。
 部屋が明るくなった感じです。お礼を言うと、「いや、電気器具は私には子ども同然ですから、きれいにしてお客様に可愛がっていただくのはあたりまえです」とニコニコしながら言い、「もし電気製品で何か困ったことがありましたらいつでも電話をして下さい。夜中でも休みの日でもすぐに飛んできますから」と言って帰って行きました。
 Fさんは、部屋だけでなく心も明るくなった気がして、これからは電気製品はすべてこの店員さんから買おうと思ったということです。

◆ 汚れて暗くなった蛍光灯を拭くのはFさんの仕事であって、なにも電気屋さんがすることはないと思うのだが、まあそれもサービスの一環だと考えるなら、それはそのひと次第で、他人がとやかく言うことではないのかもしれない。私が電気屋ならそんなことはしないが、私は電気屋ではなく、引越屋なのだった。「すみませんが、お湯をちょっといただけませんか」という台詞は使わないけれど、似たような台詞はよく使う。その言葉は「ぞうきん、ありませんか?」。このハナシはまたのちほど。

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