MEMORANDUM

◆ 先日、仕事で「ベリーズ大使館」宛ての荷物があった。大使館とあるからには「ベリーズ」は国名なんだろう。けれど、そんな国は聞いたこともない。もしかしたら風俗店かもしれんな、とも(想像力豊かなワタシは)思ったが、伝票の住所を訪ねると、建築中ではあったが、そこにはたしかにベリーズ大使館があったのだった。

〔ベリーズ国政府観光局〕 ベリーズはユカタン半島の付け根に位置する、カリブ海に面した中米の四国程の小さな国です。旧英領なので英語圏で、他の中米諸国とは少し違うカリブ海的な雰囲気を持っています。
www.belize.jp/

◆ 旧英領ホンジュラス。1981年独立。首都はベルモパン(Belmopan)。「ベリーズ(Belize)」という国名は、《Wikipedia》によると、

◇ 国名の由来はマヤ語で「泥水」を意味する言葉から来ているとされている。
ja.wikipedia.org/wiki/ベリーズ

◆ なぜ「泥水」が国名になるのかというと、この泥水というのはベリーズ川のことらしくて、

◇ The origin of the name Belize is unclear, but one idea is that the name is from the Maya word belix, meaning "muddy water", applied to the Belize River.
en.wikipedia.org/wiki/Belize

◆ ついで、ベリーズ川の河口に位置する町の名前もベリーズシティー(旧首都)と呼ばれるようになり、

◇ Le Belize se nommait autrefois le Honduras britannique. La dénomination actuelle provient du nom de l’ancienne capitale et du fleuve du même nom.
fr.wikipedia.org/wiki/Belize

◆ さらには、国名になったということらしい。

◆ あいかわらずトルコ石のことを考えている。トルコ石のことを英語風にターコイズと呼ぶひとも最近では多いのだろう。で、英語の turquoise。

〔The Turquoise Guide〕 Ask any random person why turquoise is so named. Most will look at you like you are a fool and inform you that turquoise (the gem) is named after turquoise (the color)! Most individuals seem to believe that the color name came first and was applied to the stone.
ターコイズがそのように呼ばれるのはなぜか、と手当たり次第に尋ねてみれば、ほとんどのひとが、なにをバカなことを聞くのかという顔をして、宝石のターコイズは色のターコイズから来てるんだよ、と教えてくれるだろう。色の名前が最初にあって、それを石の名前にあてはめたと思っているひとがほとんどなのだ。

www.turquoiseguide.com/articles/turquoise/turquoise-basics/name.htm

◆ なるほど。ホントかどうかはしらないが、そういうこともあるだろう。オレンジがオレンジ色なのはどうして? スミレがスミレ色なのはどうして?

◆ 日本語ではどうかと「ターコイズ色」で検索してみたら、通販の《イマージュネット》というサイトにこんな画像が……。これは、スゴイ! なんでも、「ターコイズ色の美しいノンワイヤーブラ&ショーツ」というものであるらしい。[TURN] というところをスライドさせれば、おお、画像が回転するではないか! なんと、後ろからも前からも楽しめるのであった(失礼)。いや、まあ、とにかく、これがターコイズの色見本ということで。

◆ 女性の下着と宝石。どちらも同じく身に着けるものとしての共通点を考慮すれば、またべつの、さまざまな考察が可能になるだろうけれども、そのためには、「シフォンに縦柄刺繍のふんわり水色ブラ&ショーツ」だとか「女の子のためのお泊りアイテム4点セット/ピンク」だとか「ラベンダー色の美しい丸胸メイクブラ&ショーツ」とかいったコトバにこめられた意味を、じっくりと検討する必要があるような気もするので、とりあえず、試しに「花とレースのハーモニーが涼しげなブラ&ショーツ ¥3,129(税込)~」でもネットで購入してみようかと……は思わなかったが、気がつくと、数十分が経過していたりもするのだった。

◆ 砂のない砂場、水のないプール、金魚のいない金魚鉢(金魚)。それから、なんだろう? 子どものいない母親、花嫁のいない花婿、出す宛てのない手紙。それから、なんだろう? とっくに去っていったひとへの「さよなら」、もう会うこともないひとへの「じゃあまたね」。それから、なんだろう? 不幸せな幸子(「幸」住むと人のいふ)。

◆ そういえば、井上陽水に「招待状のないショー」という曲もあった。

♪ 誰ひとり見てない 僕だけのこのショー 好きな歌を 思いのままに
  招待状のない ささやかなこのショー 恋を胸に 闇に酔いつつ
  声よ 夜の空に 星に届く様に
  声よ 変らぬ言葉とこの胸が はるかな君のもとへ 届く様に

  井上陽水 「招待状のないショー」(作詞:井上陽水)

◆ と、この歌でこの記事を締めくくれば、哀しみもちょっとは中和されて、そんなにハナシが暗くなくなるだろうと思ったのだが、いや、もうひとつ思い出してしまったから、しようがない。「招待状のないショー」が収録されている同名のアルバム『招待状のないショー』のなかのべつな曲、「今年は」にはこんな歌詞。

♪ 指切りが出来ない指 やさしさを抱けない腕
  井上陽水 「今年は」(作詞:井上陽水)

◆ この歌、ちょっと凝ったつくりになっていて、この歌詞に答えるようにだれかの声で「それはさみしかろう?」とささやくのである。いや、まったく。さみしい、さみしい。さみしくって、たまらない。あ~あ。

◇ 五月のはじめの、たそがれどき。ほの白いこの建物の周辺に見える空は、異様なまでにやわらかな青色であり、ほとんどトルコ玉の青緑色と言ってよく、それがこの情景に一種のリリシズムを与え、荒廃の雰囲気に優雅なやわらぎを与えている。
T・ウィリアムズ 『欲望という名の電車』(小田島雄志訳,新潮文庫,p.7)

◆ トルコ玉、トルコ石、ターコイズ。先の記事で「なぜだかトルコ石が好きだった」と書いたが、それ以降、ぼんやりとその理由を考えている。色だろうか? 不透明で青から緑に移り変わるその色は、saturnian 色といってもいいが(笑)、たしかに好みだ。あるいは、名前だろうか? トルコだま。トルコいし。ターコイズ(コトバの引力で、先日ふらっとトルコ料理店に入り、最後に、Tea or coffee? と聞かれ、トルココーヒーが飲みたかったワタシは迷うことなく coffee と答えたのだが、出てきたコーヒーはふつうのコーヒーだった)。あるいは、12月生まれのひとを、かつて好きだった、ことがあった、りしたのだろうか? というわけで、「なぜだか」トルコ石が気になっているうちに、もう6月だ。

◆ 5月31日、東京競馬場。ダービーの日。レースが終わり、表彰式のさなか、優勝馬がその場からそっと去ってゆく。つづいてブラスバンドも役目を終えて帰途につく。みな去り際をまちがえない。けれど、表彰式が終わっても、まだしゃべり続けているひとがいる。おしゃべりなひとに口をはさむのは、かなり気が疲れる仕事である。だが、放っておくと日が暮れて、みなが途方に暮れる。さて、どうしたものだろう。

◆ おしゃべりなひとはいつもおしゃべりだが、無口なひとが無口であるのは時と場合によることが多い。『欲望という名の電車』のブランチとステラの姉妹。姉ブランチがしゃべり通しなので、妹ステラは口をはさむ機会がない。そんなことはお構いなしに、姉は「どうしてひとこともしゃべらないの?」と妹に質問しさえする。

◇ ブランチ そう? ――私、忘れていたんだわ、あんたが無口だってこと。
ステラ 姉さんがあたしにしゃべらせてくれなかったのよ、いつだって。だからあたし、姉さんの前では無口になる習慣がついてしまったの。

T・ウィリアムズ 『欲望という名の電車』(小田島雄志訳,新潮文庫,p.20)

◆ 親子でもそんな関係になることがある。

◇ 私は無口だったので、母は私が「知恵遅れ」だと本気で思ったらしい。小学校に入る前に、専門家の知能検査に連れて行かれた覚えがある。とくに「知恵遅れ」ではなかったが、口をきかなかったのはたしかである。それは母がしゃべりすぎるからで、私の代わりにしゃべってしまうのだから、本人は黙っているしかなかったのである。
養老孟司 『脳のシワ』(新潮文庫,p.39)

◆ もちろん、そんな関係は、親子兄弟にかぎらず、世の中のどこにでも転がっている。夫婦でも友人でも同僚でも。ただ、適当な例文がみつからない。

◆ 北見の市民憲章のことを書いたついでに、全国の市民憲章も検証してみようかと思ったが、めんどうなのでやめにして、北海道内からいくつかを拾い出すだけにしておこう。まずは札幌市。

◇ わたしたちは、時計台の鐘がなる札幌の市民です。

◆ これはおそらく、さしたる確証はなんにもないが、全国で一番有名な市民憲章ではないだろうか? 市民憲章は、「わた(く)したちは、○○の市民です」という前文で始まるものが多いけれども、道内で、そのパターンのものを選んでみると、

〔函館市〕 わたくしたちは、北海道の文化発祥の地、函館に住む市民です。

〔室蘭市〕 わたしたちは、白鳥湾の美しい自然のなかで、たくましく発展している港湾と商工業のまち、室蘭の市民です。

〔釧路市〕 わたしたちは 、広野に丹頂が舞い、夕焼けが太平洋を染める釧路の市民です。

〔夕張市〕 わたしたちは開基以来石炭とともに生き きびしい自然環境に立ち向かつてきた夕張の市民です

〔岩見沢市〕 わたしたちは、生き生きとした緑の中の岩見沢市民です。

〔網走市〕 わたしたちは、母なるオホーツクの海に抱かれ、湖と森の美しい自然にかこまれた網走の市民です。

〔留萌市〕 わたくしたちは美しい日本海と留萌川にそう山々の緑にかこまれた留萌の市民です。

〔苫小牧市〕 わたしたちは 樽前山のふもと 水烏が舞い 太平洋の潮かおる勇払原野に たくましくひらけた苫小牧の市民です

〔稚内市〕 わたくしたちは、氷雪の門のあるところ秀峰利尻富士と樺太を望む、日本北端の都市稚内の市民です

〔美唄市〕 わたくしたちは たくましい開拓者精神をうけつぐ美唄市民です

〔赤平市〕 わたくしたちは、空知川にはぐくまれ石炭によって発展した赤平の市民です。

〔江別市〕 私たちは、屯田兵によってひらかれた江別の市民です

〔士別市〕 わたくしたちは、天塩川の源流にはぐくまれた士別市民です。

〔名寄市〕 私たちは、秀峰ピヤシリを望み、天塩川の恵みに育まれた美しい緑と樹氷きらめくまち、名寄の市民です。

〔三笠市〕わたしたちは、先人が大地を拓き、石炭を掘り、鉄道を敷き、北海道開拓の先べんを担った誇りをもつ三笠の市民です。

〔根室市〕 わたしたちは、太平洋とオホーツク海に望む日本の東、白鳥の群れとぶ美しい自然のなかに生きる根室市民です。

〔滝川市〕 わたしたちは、母なる石狩川と空知川の寄り合う自然に恵まれた誇りある滝川の市民です。

〔富良野市〕 わたしたちは、北海道の中心標が立つ富良野の市民です。

〔登別市〕 わたしたちは 古い歴史と美しい自然に恵まれた登別の市民です。

〔恵庭市〕 わたくしたちは、恵庭岳のそびえる、恵庭の市民です。

〔伊達市〕 わたしたちは、先人の築いた遺産と伝統を受け継ぎ、悠久の大地と豊かな自然の中で、たゆみなく歩みつづける伊達市民です。

〔北広島市〕 わたしたちは、「青年よ大志をいだけ」のこころを受けつぐ、北広島市の市民です。

〔石狩市〕 わたしたちは、母なる川にサケがのぼる石狩の市民です。

〔北斗市〕 わたしたちは 豊かな大地と歴史に結ばれた夢と希望をふくらませ ともに喜び感じるまちをつくる 北斗市民です

◆ 以上、《市民憲章情報サイト》を参考に、北海度で、行政区分上の「市」である自治体の「市民憲章」のうち、その前文が、「わた(く)したちは、○○(の)市民です」というパターンをもつものを列挙してみた。まるで、マンホールの蓋の図柄を文字で表したような感じの文章がずらりと並んで、なんたる壮観。

◆ そもそも「市民憲章」とはなんだろう? この「市民」とは、もともとは英語 citizen の訳語だったのだろうから、行政区分上の市町村の区別はあまり意味をなさないはずで、町民憲章も村民憲章も、「市民憲章」の範疇に含めて同列に扱うべきだと思う。けれど、参考にした《市民憲章情報サイト》でも、町民・村民にはあまり出番がないのが残念といえば残念。