◆ 気がつけば、もう10月も下旬で、酉の市も近い。浅草田圃の鷲神社でも準備が進んでいる。先に、船の前後を舳艫というということを書いたが、では船の左右はなんというか。左舷右舷がふつうだろうが、これではここでハナシが終わってしまうので、べつな言い方として、「とりかじ」「おもかじ」。ほんらいはそれぞれ、船が左に進路をとること、右に進路をとることを意味するが、船の左右の意味でも使う。釣具メーカーのダイワのサイトの《DAIWA:釣り用語事典》から、 ◇ 〔DAIWA:釣り用語事典〕 おもかじ(面舵):船の右舷。(左舷は、取舵) ◆ 釣り人のグログからの用例をひとつ。 ◇ 右のおじさん、激しくシャクル。浮いたビシは艫に流れる。私とオマツリ。左のおじさん、ひたすら送り込む。船が流された時にビシ置いてかれる。私とオマツリ。うーん、シュールだ。今日は釣りにならないぞっ♪ しかも、船中本命の上がった様子無し(結局面舵大艫で1) 他は黒鯛が面舵の舳で少し上がった位、取り舵はまったくのダンマリで納竿でした。 ◆ シャクル、ビシ、オマツリに納竿など、独自な用語たっぷりなのが、たのしい。わからない語は《DAIWA:釣り用語事典》で調べることにして、「面舵の舳」は「船の右側前方」ということ。 ◆ この「面舵」と「取(り)舵」の語源はというと、こんな説が知られている。 ◇ 〔独立行政法人 航海訓練所〕 「おもかじ(面舵)、いっぱい!」テレビ等でよく聞く船の用語の一つですね。これは、操船のときのオーダーの1つで『舵を右に一杯にきりなさい』という意味です。一杯というのは、通常最大舵角の約35度まで舵をきることです。逆に左に曲がりたいときは、面舵にたいして“ 取舵(とりかじ)” というようになります。この呼び方は、十二支に由来しています。船首方向を12時の子(ね・ネズミ)として時計方向に十二支を配置すれば、右側の3時方向は卯(う、ウサギ)、左側の9時方向は酉(とり)になります。そこで右側を卯面(うも)と呼び、左側を酉(とり)と呼ぶようになりました。そのことより、卯面(右)に舵をきることを“面舵”(おもかじ)、酉(左)に舵をきることを“取舵”(とりかじ)になりました。 ◆ あれこれ調べて、これがいちばんわかりやすいと思ったので引用したが、ほんとうは、もっとややこしいハナシらしくて、 ◇ 〔通信用語の基礎知識〕 面舵の名前の由来は、和船で用いられていたコンパスにある。コンパスには十二支(逆針)が描かれていた。逆針なので北になる子の方向に船首を向けると、左舷方向は卯となる。そのため、左に舵を取ることを「卯面舵(うむかじ)」と呼んでいた。これが転化して「面舵」となった。 ◇ 〔日本財団図書館:船の科学館ものしりシート〕 日本語で行われる操船号令の「おもかじ」と「とりかじ」も、この十二支によって生まれました。航海用としては逆針で、西を表わす右舷正横(うげんせいおう)が酉、東を表わす左舷(さげん)正横が卯であったので、右舷を酉の側・左舷を卯の側としました。舵柄(かじづか)を右へ取るときは「酉の舵」=「とりかじ」、左へ取る時は「卯面舵(うむかじ)」転じて「おもかじ」となったといわれています。 ◆ 船の仕組みについて詳しくないので、よくわからないままつづけると、ハナシの順序としては、(むかしの船では)船を右に向けるには左に舵を取る必要があって、そのためにコンパスも左右が逆になった「逆針」のものを用いていたということを、あいだにひとつはさむ必要があるらしい。けれども、結局はほぼ同じことになって、面舵というのは右に進路を取ることである。ただ、その場合、右舷が酉、左舷が卯となって、ほんらいの方位とは逆になる(ということらしい)。(時間切れ、つづきはそのうち) |
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