MEMORANDUM

  マンゴーの法則

◇ 足もとの草の上にマンゴーがころがっているのが見えた。熟れて樹から落ちたばかりのもののようだ。
 ふと見上げた樹に沢山のマンゴーが実っていた。私は嬉しくなり、落ちているマンゴーを拾った。ここにも、あそこにも……。
 部屋に持ってかえって冷蔵庫の中にいれてくといいな……。私は本を脇の下に挟み、両手いっぱいのマンゴーを拾った。
 そのままさらに緩いスロープを下っていった。海の近くの樹蔭に入って、このうちのいくつかをたべてみようと思ったからだ。
 歩いていくとさらに沢山落ちているのが見えた。私は両手の中のマンゴーを眺め、手の中のものよりもっと熟れていそうなのをいくつか取りかえた。
 さらに斜面を下っていくと、足もとに落ちている数がもっと増えてきた。そして林の中の、巨大なマンゴーの樹の下で足もと一面に熟れたそいつが落ちているのを見て、私は両手のマンゴーをそっと捨てた。

椎名誠 「クックタウンの一日」(『土星を見るひと』所収,新潮文庫,p.77)

◆ こういうことってよくあるよな、と思う。たとえば・・・・・・

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