MEMORANDUM

  リツ子の性格

◆ 何年たってもケイタイに慣れない。操作の仕方がわからない、といったことではない。当人にとってはふつうの会話でも、パブリックな空間では、それをたまたま耳にした他人にしてみれば、ひとりごとにしか聞こえない、という状況の異常さにいつまでたっても慣れない。さきほど、風呂屋の帰りに、コンビニの前で、60がらみの女性が、ケイタイで話している声を聞いた。

◇ 「リツ子みたいに性格悪くなきゃいいんだけど」

◆ あるいは、「リツ子みたいに性格悪くないからいいんだけど」と言ったのかもしれない。べつに聞き耳を立てて聞いていたわけではないので、断言はできない。近ごろは、風呂屋の脱衣場でケイタイで会話しているバカもいるくらいだが、風呂上りというのは、日常の緊張状態とは正反対なぐらいに極度のリラックス状態にあるものなので、騒音を遮断せよと脳が指示を出しても身体がなかなか反応しない。それどころか、ふだんより数倍の感度でその騒音が耳に入ってきたりもする。

◆ で、リツ子というのはいったい誰なんだ? 娘なのか? 自分の娘はそんな性格が悪いのか? 育て方が悪かったせいじゃないのか? それとも妹なのか? それとも、息子の嫁なのか? リツ子ってのは? どういう字を書くんだ? 律子なのか? もう、せっかくの風呂上がりも台なしだ。

◆ そんなわけで、家に帰ってから、個人的な思い出として、高校の同級生の律子さんを思い出し、そういえばあの律子さんはいまごろどうしてるかなあ、と考える。性格はまったく悪くなかった。悪かったのはもちろんワタシの方で……。

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