MEMORANDUM

  無口なひと

◆ おしゃべりなひとはいつもおしゃべりだが、無口なひとが無口であるのは時と場合によることが多い。『欲望という名の電車』のブランチとステラの姉妹。姉ブランチがしゃべり通しなので、妹ステラは口をはさむ機会がない。そんなことはお構いなしに、姉は「どうしてひとこともしゃべらないの?」と妹に質問しさえする。

◇ ブランチ そう? ――私、忘れていたんだわ、あんたが無口だってこと。
ステラ 姉さんがあたしにしゃべらせてくれなかったのよ、いつだって。だからあたし、姉さんの前では無口になる習慣がついてしまったの。

T・ウィリアムズ 『欲望という名の電車』(小田島雄志訳,新潮文庫,p.20)

◆ 親子でもそんな関係になることがある。

◇ 私は無口だったので、母は私が「知恵遅れ」だと本気で思ったらしい。小学校に入る前に、専門家の知能検査に連れて行かれた覚えがある。とくに「知恵遅れ」ではなかったが、口をきかなかったのはたしかである。それは母がしゃべりすぎるからで、私の代わりにしゃべってしまうのだから、本人は黙っているしかなかったのである。
養老孟司 『脳のシワ』(新潮文庫,p.39)

◆ もちろん、そんな関係は、親子兄弟にかぎらず、世の中のどこにでも転がっている。夫婦でも友人でも同僚でも。ただ、適当な例文がみつからない。

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