◆ おしゃべりなひとはいつもおしゃべりだが、無口なひとが無口であるのは時と場合によることが多い。『欲望という名の電車』のブランチとステラの姉妹。姉ブランチがしゃべり通しなので、妹ステラは口をはさむ機会がない。そんなことはお構いなしに、姉は「どうしてひとこともしゃべらないの?」と妹に質問しさえする。 ◇ ブランチ そう? ――私、忘れていたんだわ、あんたが無口だってこと。 ◆ 親子でもそんな関係になることがある。 ◇ 私は無口だったので、母は私が「知恵遅れ」だと本気で思ったらしい。小学校に入る前に、専門家の知能検査に連れて行かれた覚えがある。とくに「知恵遅れ」ではなかったが、口をきかなかったのはたしかである。それは母がしゃべりすぎるからで、私の代わりにしゃべってしまうのだから、本人は黙っているしかなかったのである。 ◆ もちろん、そんな関係は、親子兄弟にかぎらず、世の中のどこにでも転がっている。夫婦でも友人でも同僚でも。ただ、適当な例文がみつからない。 |
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