MEMORANDUM

  馬面

◆ 馬の顔を見ていると、まさしく馬面だなあと思うときもあるし、意外に丸顔だなあと思うときもある。

うまづら 【馬面】 馬のように長い顔。顔の長い者をあざけっていう語。うまがお。
小学館 『大辞泉』

◆ 馬面といっても、人間の場合、耳が顔の上にあるわけではないし、目が顔の真横にあるわけでもない。顔のパーツの配置が馬に似ているということが馬面なのではなくて、顔が縦に異様に長いことを馬面というようである。だが、顔が長いというだけでは、馬面というわけにはいかない。たとえば、七福神の福禄寿は馬面だろうか?

◇ 顔の上半分が上に伸びる事はないだろう。しかし上へ伸びたのではなく、顔の諸道具が下にずり落ちた為、上の方が広広と残っている例はある。
内田百閒 「馬は丸顔」 ( 『内田百閒集成15 蜻蛉玉』,ちくま文庫,p308)

◆ なるほど、あの顔は目や鼻が 「ずり落ちた」 結果であったか。まったく百鬼園先生はいろんなことを教えてくれる。明治初期のジャーナリストとして著名な成島柳北、それから福地源一郎(桜痴)。このふたりが、ある年、馬に乗って隅田川の花見に行った。ところで、この成島柳北というひとはまさしく馬面というにふさわしい顔立ちだったらしい。馬上の柳北の姿をしげしげと眺めた桜痴は、「感にたえて一首詠んだ」。

 さてもさても
 世は逆さまと成りにけり
 乗りたる人より馬は丸顔

 Ibid. p.307-308

◆ 《国会図書館》 の 「近代日本人の肖像」 というページの成島柳北の写真を見てみると、たしかに立派な馬面である。さぞかし馬も面食らったことだろう。

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