MEMORANDUM

  男は

♪ 男は誰もみな 無口な兵士
笑って死ねる人生 それさえあればいい

◆ 一日の仕事を終えて、疲れ切って(というほどのこともないが)、もうこのまま寝てしまおうかと思ったりもしたが、やはり風呂に入っておこうと、よたよたと銭湯に向かい、ひと風呂浴びて、いくぶんか元気を取り戻して、脱衣場でくつろいでいると、女湯の脱衣場のほうからの会話が聞こえる。会話と書いたが、ひとりの声しか聞こえない。もしかするとケイタイで通話していたのかも。あるいはひとり言だったのかも。ありふれたオバサンの声。

◇ ・・・いまではテレビがおともだちでね。

◇ 今日なんか休みなんだから、どこかに出かけてくれればいいんだけど・・・。

◆ 話題は定年退職したダンナの日常であるようだった。あいかわらず話し相手の声は聞こえない。ひとりが一方的にしゃべりまくっている。とにかく声がでかいので、聞くつもりはなくとも聞こえてしまう。

◇ 男は、もう早く死んでもらわなきゃダメだね。

◆ 風呂上りにこんなハナシを好き好んで聞きたくはないが、耳をふさぐのは手間なので、聞こえるにまかせる。そうか、早く死んでしまったほうがいい?

◆ 女湯のとなりには仕切り一枚をへだてて男湯があって、そこには見えないにしても男たちがいるだろうから、などとは思いもしない。あるいはわざと男に聞かせているのか?

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