MEMORANDUM

  ボロボロ羽幌

◆ バリバリ夕張、ボロボロ羽幌。

◇ 僕が高校時代に夕張のPRのために 「バリバリ夕張」 というフレーズがあったが、羽幌出身みのや雅彦のアタックヤングというラジオ番組の中の葉書ネタで 「ボロボロ羽幌」 というのがあって、うまいこと考える人がいるんだなあなんてヘンな感心をしたことがある。
jiko-hokkai.hp.infoseek.co.jp/haborokou.html

◆ 20年以上も前のはなし。若かりしころロマンチスト(バカという意味だが)だったワタシは、わけもなく北に憧れ、札幌の大学に入学した最初の冬に、さらに北を目指して、稚内へと旅立ったのだったが・・・。

◆ 鉄道で稚内に行くのなら、宗谷本線経由が一般的だろうが、学生というのは時間だけはたっぷりあるので、時刻表の路線図を眺めて、日本海沿いを走る羽幌線経由で行くことにした。その羽幌線もいまはない。

◇ 羽幌線(はぼろせん)は、日本国有鉄道(国鉄)が運営していた鉄道路線(地方交通線)。北海道留萌市(留萌支庁管内)の留萠駅で留萠本線から分岐して日本海に沿って北上し、天塩郡幌延町の幌延駅で宗谷本線に接続する。国鉄再建法の施行により特定地方交通線(第2次)に指定され、民営化直前の1987年に廃止された。〔中略〕 もともとは羽幌町の炭鉱開発と運炭、そしてニシンの輸送を主な目的として建設された路線だったが、炭鉱の閉山とニシン漁の不振、沿線人口の減少によって貨物・旅客の輸送量が減り、道路(国道232号)もよく整備されていたため存在意義を失い、第二次廃止対象路線となった。国鉄最後の廃止路線である。
ja.wikipedia.org/wiki/羽幌線

◆ 留萠(るもい)から、羽幌線のディーゼルカーに乗車。ここからは延々と日本海に沿って北上する。真冬の日本海はどんなだろう。すっかり旅人気分で、鈍行列車から窓の外を見る。だが、海は見えない。海どころか、なにも見えない。いや、目はしっかり開けているのだから、なにも見えないはずはない。正確に記そう。雪しか見えない。白い雪しか見えない。外は猛吹雪だった。

◆ 真っ白な世界。これまた北海道の冬らしくていい。若さというのは物事を楽観的に考えさせるもののようだ。そとの景色はいつまでも変わらない。それでも列車はひた走る。ほどよい振動が眠りを誘う。いつしかワタシは夢のなか・・・。

◆ ふと目覚めると、列車が止まっている。窓の外に目をやるが、どこにもホームはない。そうこうするうちに、車内放送が流れる。どうやら、雪の吹き溜まりに突っ込んだらしい。前進できないので、しばらく待てという。しばらく待ったが、状況に変化はない。そうこうするうちに、また車内放送が流れる。現状では前に進めないので、前の駅まで戻るという。列車はすごすごと南へと引き返し始める。だが、またすぐに止まってしまう。しばらくして、申し訳なさそうな車掌の声が、「前にも後ろにも進めません」。後ろにも吹き溜まりがあるんです。なるほど。それではしかたがない。

◆ 列車はあいかわらず停車したままだ。並行する国道では、なにごともないかのように車が走っている。ようやく待ちきれなくなった乗客のひとりが、ここで降りるからドアを開けてくれと車掌に頼む。「歩いて帰るから」。

◆ そんなふうにして、近くのひとが何人か列車を降りていった。のこされた乗客は遠くまでいくひとたち。こんなところで降ろされても困る。何時間かたって、もう暗くなってから、駅までなんとか歩けるところまで列車は進み、そこで止まった。今日はもう列車は動きません。駅には職員用の宿泊施設があります。ご希望の方はそこでお泊りください。

◆ その駅が羽幌駅だった。何人かの乗客とともに、その夜は職員用の二段ベッドで寝た。たしかおにぎりが出た。高校受験の帰りの中学生と話をした。つぎの朝、羽幌の駅前の 「駅前食堂」 という名の食堂で、朝食を食べたような覚えがある。けっきょく北の稚内へ向かうことをあきらめて、札幌へ戻ることにした。なにも見ていない。ただ羽幌まで行って帰ってきただけのローカル線の旅。もちろん、運賃は払い戻し。まあタダならいい。

◆ 羽幌を訪れたのはその一度しかない。留萌支庁苫前郡羽幌町。

◇ 町の本格的な開拓は近隣の苫前町、初山別村より遅い明治中期以降であるが、大正期に優良な石炭を産出する羽幌炭鉱が発見されて以来、石炭中心のモノカルチャー都市として発展。しかし、炭鉱閉山の1971年(昭和46年)以降は過疎化が著しい。〔中略〕 炭鉱閉山後の1971年(昭和46年)、人口がついに3万人を割り込み、あわてて市制施行を実施したが、自治省の指導により市制施行が取り消される珍事が有った。
ja.wikipedia.org/wiki/羽幌町

◆ 当時、羽幌に炭鉱があったことなど知るよしもなかった。いま 《羽幌町ホームページ》 を見ると、映画上映会のお知らせ。3月9日(金)、中央公民館大ホールにて。

◇ 昭和40年代の福島県・常磐炭鉱の閉山危機を迎えた街を変貌させた 「常磐ハワイアンセンター」。実話を元に閉山危機に揺れる街、そこに生きる人々の交流を、地域の再生と絡ませて感動的に描かれた作品です。

◆ 上映されるのは 『フラガール』。羽幌のひとたちはどんな気持ちでこの映画を観るのだろう。

◆ そうそう、ちょっと北海道に行ってきます。羽幌は行かないけど。

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