◇ お銀様もまた、昔から、この 「新月」 が好きなのでありました。特に今まで、お銀様が 「新月」 が好きだという記録はこの作中には書いてなかったが、それは書く場所を見出さなかったから現われなかったまでのことで、かつて武州小仏の峠から、上野原方面へ迷い入った時に、たしかこの月影を西の空にうちながめたことがあったはずです。「新月」 を好くお銀様は当然、「満月」 というものを好かないのです。 ◆ いままで新月というものは目に見えないものだと思っていたが、どうもお銀様には見えるらしい。見えない方がおかしいのだろうか? ◇ 新月とは月が欠けて完全に見えなくなっている月のこと。 ◇ 新月とは月が太陽の方向にあるときのことで、月は見えません。 ◆ どうしてお銀様には見えない月が見えるのだろう? 辞書を引くと、まず 「朔に同じ」 とあり、次に、 ◇ 陰暦で、月の初めに見える細い月。 ◆ とあった。なんのことはない、むかしの新月は見える月だったのだ。よく考えると、こちらの用法の方が、コトバとしてはすなおに感じる。見えない月を月とは呼びにくい。新しい月ならなおさら見えた方がいい。 ◇ 新月は、本来は朔の後に初めて見える月のことである。グレゴリオ暦採用以後の日本の旧暦で二日または三日に見える。太陰太陽暦では、新月の日を以て月初としていた。「ついたち」 というのも元は 「月立ち」 であり、新月のことを指していると考えられる。漢字の 「朏(ひ)」 も同様である。 ◇ 新月 (new moon) 朔のこと。ただし古代には朔のあと、最初に見えるようになった月を 「新月」 と呼んだ。そして 「朔」 はそこから 「遡って」 完全に月が見えていなかった日として推算していた。現代では朔と同じ意味で使用する。 ◆ 見えない新月は、英語の new moon の訳語だというハナシもある。 ◇ 新月はもともと new moon の訳語として日本語に導入されました。 ◆ けれども、英語の new moon も、辞書を引くと、 ◇ 1. The phase of the moon occurring when it passes between the earth and the sun and is invisible or visible only as a narrow crescent at sunset. ◆ と、(見えない月と見える月の)ふたつの語義があって、日本語とほぼ同様の混乱を引き起こしている。 ◇ New Moon is often considered to occur at the time of the appearance of the first visible crescent of the Moon, after conjunction with the Sun. ◆ そりゃそうだろう。やっぱり見えないものを moon とは呼びにくい。 ◆ ようするに、新月というコトバの新しい意味(見えない月である「朔」)が普及したのは、天文学にもとづく科学教育の結果なのだろう。ワタシもその意味を小学校の教室で教わったのだった。 |
このページの URL : | |
Trackback URL : |
新月といえばラマダン?屋上から見てる。