MEMORANDUM

  金魚

◇ 『お父さん金魚が死んだよ、水鉢の金魚が。
『おんちやん金魚がへんだ。金魚がへんだよおんちやん。

伊藤左千夫 『奈々子』 (青空文庫

◆ 毎週火曜日に行く銭湯の脱衣場には水槽があって、金魚が泳いでいる。べつに風呂屋に金魚を見に行くわけではないから、それほど気にしていたわけではないけれど、ときどき写真に撮っていた。今週の火曜日、その水槽に金魚はいなかった。番台のアンちゃんに聞くと、先週死んだという。さいきんはずっと水槽に金魚は一匹しかいなかった。その金魚が死んだのだった。そういえば、番台のおばちゃんも久しく見ない。

金魚と死
霜ふればしんじつ命愛(は)しとおもひ金魚に死ねといひにけるかな
千べん万べん命のかぎり玻璃鉢の金魚はあはれ尾鰭(をひれ)うごかす
くれないの金魚は体かたむけてあはれ大きく水のみしかな
六匹の金魚いつしか一匹となりし朝なり雪ふりしかも
なにもなき金魚の鉢のさびしさに炉石(ろろし)おとせば底に鳴るかも

『小熊秀雄全集-1 短歌集』 (青空文庫

〔追記:2009/06/04〕 上に「番台のおばちゃんも久しく見ない」と(失礼なことを)書いたが、その後、ときどき見かける。元気そうでなにより。

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