MEMORANDUM

  カルメ焼き

◆ 11月28日、三の酉の日。車椅子のKさんと浅草田圃の鷲神社の酉の市を見に行った。と書くとやや正確さに欠ける。そもそもKさんの住まいが鷲神社のすぐとなりなので、窓を開ければ露店の喧騒が聞こえ、ベランダに出れば熊手を手にした人たちの雑踏が見え、また縁日特有のさまざまなにおいがする。だから、見に「行く」というほどのことでもない。とりあえず神社で縁起物の熊手の一番ちいさいのを買って、しばらく延々と続く露店を冷やかして歩いた。そのなかにカルメ焼きの店があった。ちょっと珍しいと思ったので、ひとつ買って帰った。

◆ 実は、このカルメ焼きなるもの、ワタシは食べたことがない。さだまさしの「木根川橋」という歌で、その名前を聞いたことがあるだけだ。

♪ もんじゃ焼きのコツ 忘れちゃいませんよ
  カルメ焼き冷やすより易しかったもの

  さだまさし 「木根川橋」(作詞:さだまさし)

◆ ついでに、もんじゃ焼きの方も東京に来るまでは食べたことなかったし、そのコツもいまだに会得していない。で、このカルメ焼きは地方によってはカルメラ焼きともいうらしい。

◇ 戦後の物資欠乏のおり、なぜかキザラ(ザラメの砂糖)が配給になっていました。台所にあるお玉杓子にキザラを入れ少しの水を差します。炭火の七輪にかけてよくかき混ぜて飴状になったら火から下ろし、割り箸に重曹を少しつけすばやくかき混ぜます。うまく膨らんだらもう一度軽く火にかけお玉を裏返しにしてポンとはずします。うまく行くと大きく膨らみ甘くてさくさくした食感のおいしいカルメラ焼きが出来あがります。先日、人形町(東京)水天宮門前の駄菓子屋さんできれいに焼きあがったカルメラ焼を見つけました。子供の頃カルメラ作りの名人と褒められていたことを思い出しながらカルメラ焼に挑戦してみましたが一個もうまく膨らみませんでした。
www2s.biglobe.ne.jp/~tkame/newpage8.html

◆ なるほど、きれいに作るにはかなりの熟練が必要なようだ。また、宮沢賢治はカルメ焼きのことを「カリメラ」と書いている。

◇  ひとりの子供が、赤い毛布(けつと)にくるまつて、しきりにカリメラのことを考へながら、大きな象の頭のかたちをした、雪丘の裾(すそ)を、せかせかうちの方へ急いで居りました。
(そら、新聞紙(しんぶんがみ)を尖(とが)つたかたちに巻いて、ふうふうと吹くと、炭からまるで青火が燃える。ぼくはカリメラ鍋(なべ)に赤砂糖を一つまみ入れて、それからザラメを一つまみ入れる。水をたして、あとはくつくつくつと煮るんだ。) ほんたうにもう一生けん命、こどもはカリメラのことを考へながらうちの方へ急いでゐました。

宮沢賢治 『水仙月の四日』(青空文庫

◆ そうそう、買って帰ったカルメ焼き、けっきょく食べることができませんでした。なぜって、Kさんが食べたそうにしてたから。その代わり、Kさんのカルメ焼きの思い出話をたくさん・・・。

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