MEMORANDUM

  湯守など

◇ 開湯千二百年の歴史を誇る奥日光湯元温泉。 / そこで「湯元御三家」の一つとして、代々湯守を務めてきた釜屋旅館が二月、産業再生機構の支援を受けることを表明した。
www.shimotsuke.co.jp/hensyu/kikaku03/asigin/rensai/saisei4/kagyou4.html

◆ こんなことになっているとはつゆ知らず、先日この温泉に一泊し、これがなかなかいい湯だったけれども、それはさておき、湯守というコトバがいいなと思ったのである。そして、これまた先日、ある本を読んでいたら、

◇ 京都の 「桜守」 として知られる佐野藤右衛門はこう語っている。
佐藤俊樹 『桜が創った 「日本」』(岩波新書,p.184)

◆ という文章があって、どう語っているかはこれまたさておき、桜守というコトバがあるんだなと思ったのである。そしたら、あれこれいろんなコトバが浮かんできたのである。これは2001年のニュースだが、

◇ 歌手で女優の西川峰子さんが、隠岐島・海士(あまちょう)町の男性と結婚。彼女のハートを射止めたのは、後鳥羽上皇の墓守を代々つとめる村上さん。イチローと結婚した福島由美子さん以来の、島根発めでたい芸能ニュースでした。

◆ 湯守、桜守、墓守、それからなにがあるかな? 子守なんてのもあるけれど、これはちょっとつまらない。では、灯台守。

◇ 難破して、わが身は怒濤に巻き込まれ、海岸にたたきつけられ、必死にしがみついた所は、燈台の窓縁である。やれ、嬉しや、たすけを求めて叫ぼうとして、窓の内を見ると、今しも燈台守の夫婦とその幼き女児とが、つつましくも仕合せな夕食の最中である。ああ、いけねえ、と思った。おれの凄惨な一声で、この団欒が滅茶々々になるのだ、と思ったら喉まで出かかった 「助けて!」 の声がほんの一瞬戸惑った。ほんの一瞬である。たちまち、ざぶりと大波が押し寄せ、その内気な遭難者のからだを一呑みにして、沖遠く拉し去った。
太宰治 『一つの約束』(青空文庫

◆ あとは昔のおはなし。

◇ あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る 額田王

◇ わが髪の雪と磯辺の白波といづれまされり沖つ島守 土佐日記

◇ 淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守 源兼昌

◇ 今替る新防人が船出する海原の上に波なさきそね 大伴家持

◆ 新防人は 「にいさきもり」 と読む。防人は 「崎守」 に同じ。

◆ イモリ (井守) とヤモリ (家守) はまたいずれ。

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