MEMORANDUM

  しばられ地蔵

◆ 時間を見つけては PhotoDiary の抜けた日付のところの穴埋め作業をしている。で、先日、去年の8月30日の写真をあれこれ見ていたら、こんな写真を見つけた。葛飾区東水元の南蔵院というお寺のお地蔵さん。朝、仕事の前にちょっと寄って見てきたんだった。荒縄でぐるぐる巻きにされてるから、「しばられ地蔵」 って名前がついてる。この写真を撮ったのは真夏のことだから、ほんとは暑くてしようがないんだろうけど、いまこの写真を見てるのが真冬なもんで、あったかそうでいいなあと思ってしまった。ウールのセーターを着てるみたいだ。ね、そうじゃない? だから、冬に (それが夏であることに気づかずに) 夏の写真を見るってのもアンガイ悪くないもんだ。と半分は言い訳だけれども。

◆ デジカメの便利なところはメモ帳代わりにもなるところで、ついでに撮っておいた案内板の説明を拡大して読んでみると、

◇ 大岡政談の一つとしても有名である 「しばられ地蔵尊」 は昔より、盗難除け、足止め、厄除け、あらゆる願いごとを叶えるとして祈願するものが多く、祈願者は先ず地蔵尊を荒縄でしばり成就の暁には、これを解く風習となっている。

◆ なるほど、有名だったのか、このお地蔵さんは。もちろんワタシは知らなかったので、先日カゼで仕事を休んだときに、図書館へ行って東洋文庫の 『大岡政談』 を借りてきて読んでみた。あらすじはこんなふう。

◇ お地蔵さんの前で寝ていた商人が反物を置いたまま眠ってしまいました。すると反物は盗賊に盗まれてしまったのです。 / 「お地蔵さんはだまって見ていたのか!」と怒った大岡越前は、グルグル巻きにしてしまいました。 / しかし、そのあと盗賊団が捕まったのでお地蔵さんは祭られるようになったのです。
www.kfm789.co.jp/report0401.html

◆ これでは短すぎてよくハナシがわからない? という方は、コチラのサイトが詳しいです。
《珍獣の館:今昔かたりぐさ:大岡裁き(二)縛られ地蔵》

◆ と、なかなかよくできたお話なのでした (読んでないひとにはわからない)。

◆ 大岡越前の名セリフをふたつ。まず、お地蔵さんのそばでついうたた寝をして反物を盗まれ、駆け込み訴えをした荷担ぎ弥五郎に向かって曰く、

◇ 「その方、地蔵菩薩は国土を守る仏なれば、ここへ置く時は気遣いなしと安堵して居眠りたるゆえ、荷物を取られしと見えたり。これ油断とはいえども名に負う地蔵に似合わず、盗まれるを知らぬとは仏たりともそのままに差し置き難し。江戸に居る仏は我が支配なればゆるし難し。早速地蔵を召し捕って吟味すべし。同類かも計り難し」 と同心へ地蔵召し捕り方を申しつけられける。
『大岡政談 2』(辻達也編,平凡社,p.250)

◆ 「江戸に居る仏は我が支配」 とは、なかなか言えないセリフではある。ワタシが地蔵ならヘソ曲げちゃうところだ。つづいて、縄で召し捕らえたお地蔵さんを前にお白州で曰く、

◇ 「いかにその方、名高き仏にして、諸人に南無地蔵大菩薩と尊敬を受け、衆生利益する身にありながら、越後屋八郎右衛門の荷担ぎ弥五郎が木綿荷を盗まるるを知らずして居たりしこと不埒千万なり。但し得心づくにて盗ませしなれば同類と申す者、まっすぐに申せ」 と言われしに、地蔵一言の答えなし。
Ibid.p.251

◆ 答えるわけないよな、地蔵だもの。それにしても、やるな大岡越前。テレビが観たくなったけど、いまは放送してないのかしら?

◆ あ、そうそう、このお地蔵さん、震災後の昭和4年に寺の移転にともなって、本所中之郷(墨田区吾妻橋)からいまの葛飾へ引っ越してきたそうな。そのときは、縄でしばられて来たんだかどうだか。

◆ それから、このお地蔵さん、ワタシが見たときはわりとほどよい 「しばられぐあい」 だったけれど、さらにつぎつぎ祈願者が来て縄をぐるぐる巻き続けると、ミイラさながら顔まで見えなくなってしまうのは必定で、そんな状態の写真がコチラに。
《珍獣の館:今昔かたりぐさ:しばられ地蔵の縄解き供養》
なんでも大晦日の夜にに、すべての縄を解かれてさっぱりするのだとか。でも年が明けるとすぐさま元通りのぐるぐる巻きになってしまうのだとか。

◆ 最後に実際にしばられ地蔵をしばったひとの体験談。

◇ しばられ地蔵は、すでに縛られまくっていた。 / 「俺は、どちらかといえばSではないが……」 ぶつぶつ言いながら俊晴は一本の縄を買い、地蔵を縛った。 / 縛られた縄の中には、相当にテクニカルな縛り方のものがみえる。 / 「痛ッ!」 荒縄のトゲが指に刺さってしまったらしい。 / 金町のしばられ地蔵の次は、巣鴨のとげぬき地蔵に行くのが良いコースかもしれない。
www.geocities.com/hutarour/teito.html

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