◆ 今日午前11時過ぎ、板橋区坂下2丁目の公団けやき台ハイツの公園の片隅、植え込みの陰に、文庫本が一冊、ページを開いたまま「丁寧に」置かれているのを見た。なぜだかは知らない。なんの本だろうと興味がわいて、近寄って、それが新潮文庫のフランソワーズ・サガン『愛は遠い明日』(朝吹登水子訳) であることを知る。サガンは読んだことがない。
◇ 【パリ25日共同】ベストセラー小説「悲しみよこんにちは」や「ブラームスはお好き」などで知られるフランスの女性作家フランソワーズ・サガンさんが二十四日夜(日本時間二十五日未明)、ノルマンディー地方オンフルールの病院で心臓疾患のため死去した。六十九歳。この数カ月間、入退院を繰り返していた。
www.nishinippon.co.jp/media/news/news-today/20040925/news012.html
◆ サガンが死んだのは先月のことだった。多くのメディアが「悲しみよさようなら」と彼女の訃報を伝えた。
◇ Françoise Sagan : Au revoir Tristesse
www.alalettre.com/hfcenter_accueil.htm
◆ たんなる語呂合わせではない。
◇ 私生活でも話題に事欠かなかった。2度の結婚で子供も出産したが、いずれも離婚。57年には猛スピードでスポーツカーを運転中に事故を起こし、重傷を負った。「ポルシェを靴を履いて運転するのはカッコ悪い。私は裸足で運転する」。事故にも懲りないまま。カジノ賭博やアルコール依存症などのゴシップも報じられた。故ミッテラン大統領との親交も注目を集めた。〔中略〕 90年代に入ると、スキャンダルばかりにつきまとわれた。90、95年にはコカインの使用と譲渡の罪で起訴され、執行猶予付き判決を受けたが「人間は他人の自由を侵さない限り自由なはずだ」と麻薬常習を告白した。旧国営石油会社エルフ・アキテーヌから資金提供を受けていたことが発覚、脱税の罪で禁固1年の執行猶予付き判決も受けた。
www.nikkan-kyusyu.com/cgi-bin/vi/view.cgi?jl=ts&id=1096158302
◆ こうした事柄が彼女にとって「悲しみ」であったかどうかは、もちろん誰にもわからない。
◇ グレは最初の鉱屑山の影を通り過ぎてから、タバコに火をつけるために立ち止まった。風が、その年はじめて草と田舎の匂いをふくんだ風が、彼の灯けたマッチを一本、ついで二本、そして三本まで消した。四本目が指を焼いたので、彼は苛々しながら別のをとり出そうとしてマッチ箱を投げすてた。
◆ はじめて読んだサガン。『愛は遠い明日』の10/11ページ。
◇ フランス北部にあるサンソン鉱業の会計課に勤めるゲレは、貧しくおとなしい若者だった。冬の日の夕方、下宿に帰る途中、ぼた山付近で巨額の宝石を拾ったゲレの運命が狂いはじめた! 欲望と夢と虚栄心から強奪犯人になりすましたゲレ。強かな野心で彼を誘惑する下宿の女主人マリア。過去をもつ年上の女に翻弄されながら、アフリカで愛の生活を信じる若者の悲劇を描く長編小説。
www.amazon.co.jp/exec/obidos/asin/4102118187/249-7390453-2205169
◆ おもしろそうだが、読むことはもうないだろう。合掌。