MEMORANDUM

  不許葷酒入山門

◆ 先日(といっても一ヶ月以上も前だが)、狛江の泉龍寺という曹洞宗の寺で「不許葷酒入山門」と刻まれた石柱を目にした。このように戒律が書かれた石柱を戒壇石(あるいは結界石)と呼ぶそうで、ほかにも、「禁藝術賣買之輩」なんてのがあるらしい。

◇ ここで言う芸術売買の輩とは今日の芸術家のような文化人のことではなく 物乞いまがいの門付けをする旅芸人を指し 寺の境内で大道芸を見せ商売にすることを禁じており 禅寺の風格を浮き彫りにしています。
www.city.yachiyo.chiba.jp/watching/bunkazai/bunk09.html

◆ 「不許葷酒入山門」は「葷酒(くんしゅ)山門に入るを許さず」と読んで、要するに、葷を食べたり酒を飲んだりした人は寺に入るな、ということ。で、この「葷」とは何かというと、

◇ 葷は五葷といい、漢方の五辛に当ります。五辛は五種類の辛く、又においのものですが、時代、場所によって少し異なります。大蒜(ニンニク)、韮(ニラ)、葱(ネギ)、薤(ラッキョウ)、薑(ショウガ)、ですが、葱が玉葱 (タマネギ) になったり、薑が浅葱(アサツキ)になったり、又野蒜(ネビロ)になったりします。
www.sousei.gr.jp/special/yakso6.html

◆ では、これらの野菜がなぜ禁じられているのかというと、

◇ これら臭気をもつ野菜類を禁じるのは食べると精力が増進するので修業の邪魔になるため。
www.kikkoman.co.jp/homecook/chie/kotowaza/ku.html

◆ だそうだが、そうじゃなくても、ニンニクを食って修行に来られたんじゃ、周りのものが口臭で、悟りを開くどころではないだろう。酒もしかり。酔っ払っていては、目は回り、ろれつは回らない。禁止して当然だろう。仏教の五戒のひとつが、ずばり「不飲酒戒」(酒を飲むなかれ)である。けれども、日本の仏教文化は奥が深い。漢文にも造詣も深い。

◇ 「不許葷、酒入山門」(葷は許さず、酒は山門に入る)とか、「不許、葷酒入山門」(許さざれども、葷酒山門に入る)とか、「不許葷酒、入山門」(許されざる葷酒、山門に入れ)と適当に句読点の位置を変えて飲酒の口実にする僧がいるとか。
www011.upp.so-net.ne.jp/t-kitao/sub22sub65_higasiyama.html

◆ よくわからないけれど、漢文のテストではどれも正解なのかしら? このなかでは、「許さざれども、葷酒山門に入る」ってのが、いいなあ。さて、日本の仏教文化はまだまだ奥が深い。漢文の先生にバツをくらったときのために、さらなる手を用意している。準備周到である。ひとこと、「これは酒ではありません」といえばいいのである。続けて、これは「般若湯なるものです」と。

◇ 薬として身体のために少しぐらい飲むのならよかろう、ということで、酒として飲むのではない、という意識から、「智恵のわきいずるお湯」という意味を持った「般若湯」という名をつけたのです。
www.kongokaku.org/faq/faq5-12.html

◆ 見るからに酒で、飲んでみても酒にほかならないのだけれど、これは般若湯で酒ではないのだった。

◇ 純米吟醸酒 高野山般若湯 『聖』HIJIRI
www4.ocn.ne.jp/~sakagura/syouhin.htm

◆ なんて、商品まであるくらいで。でも、どうせなら、これは酒ではないから、酒税法の範囲外であると主張して、税抜きの値段で売ってほしいところではある。さて、文化は進歩する。必ず進歩するのである。

◇ ある和尚さんの会議に行き、〔・・・・・・〕昔は入るお酒は般若湯だけだったが、今は洋般若、泡般若、いろいろ入っているという話しを聞きました。
www.sousei.gr.jp/special/yakso6.html

◆ どうやら、この文化は、知らないうちに、一般にも普及しつつあるようで、

◇ 今日は、般若湯・泡般若・洋般若ともに無かったので、樹氷という国産の蒸般若をいただいた。
www1.coralnet.or.jp/gluon/sub80302.htm

◆ なるほど。ワタシも少しは悟りに近づいたような気がする。ああ今、般若湯を飲み干してしまった! そうそう、冒頭の写真のことだが、あのときは、あの寺を近道でたまたま通り抜けたのだった。そうして、寺を出るときに、あの「不許葷酒入山門」と刻まれた戒壇石に出会ったのだった。つまり、裏からはいっちゃったのである。朝だったので、もちろんシラフだったのだが・・・。というわけで、裏門にも戒壇石を、ぜひ! (これから一風呂あびて、泡般若!)

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