MEMORANDUM

  少年のころ

◆ 引き続き、『北の国の食物誌』から。これは「ツブ」の項の冒頭。

◇  少年のころ、一時期、私は図書館長になりたかった。館長は他人にただで本を貸し、勉強させ、みんなを偉くする仕事だから、男子の本懐であろうと、幼稚に思ったからだ。
 もっとも、図書館長の前に、運河の近くに住んでいた関係で、沖仕の人夫頭になりたいと思ったこともあった。一番長く続いたのは、鉄道員だった。それも駅長ではなく、保線工員であった。
 黒いゲートルを巻き、鶴嘴を持ち、レールの上を、どこまでも歩いていく保線工員に、はてしなき魅力を感じた。そして最後が図書館長だ。理想が高くなったのか。
 私はこの希望を、すぐ上の姉にもらしたら、お前はダメだと一笑に付された。姉の見解では、あのぼう大な図書館の本を、全部読んだ人でなければならぬといわれた。(p.54)

◆ ツブ貝はうまい。この文章もうまい。こういった文章がいちばん好きだ。

◆ 小学校の卒業文集の「将来の夢」のところに、「京都駅の駅長になって、電車に乗って全国を回りたい」と書き、駅長じゃ電車になんか乗れないぞ、ときわめてまっとうな批判を浴びつつも、それでもめげない同級生がいた。きっと名誉と興味を両立させたかったんだろう。残念ながら、これはわたしのことではありません。ツブのはなしはどこへやら・・・

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