◆ リルケの『マルテの手記』が好きで、といっても読み通すわけではなくて、適当にページを開いてところどころを拾い読みするのが常だったが、これまで数種類の翻訳で読んだことがある。先日(06/17)、高円寺の古本屋に旺文社文庫版の『マルテの手記』(星野慎一訳,1969)があったので、買って帰った。当時の定価は170円。旺文社文庫は学生向けということなのか註が多くて意外に役に立つという印象があるけれど、いまはあるのかないのか。それはさておき、この文庫の解説(訳者による)に、 ◇ 詩人リルケは祖先にふかい関心を持っていて、少年時代からいろいろな系図を書いてみたほどであった。一般にもリルケ家は古い貴族の名門で、祖先にはスラブの血がまじっているように信じられていた。詩人自身も、それを信じ、誇りとしていた。しかし、詩人の死後六年、フライシュマン教授の研究によって、リルケ家が生粋の古いドイツ農民の出であることが明らかになった。(p.270) ◆ と書いてあって、わたしがリルケの研究者であるわけでもないのだから、貴族だろうが農民だろうが知ったことではないのだけれど、そういえば、伝記的事実についてはこれまでなにも知らなかったにもかかわらず、なんとなく、ただなんとなく、勝手にリルケに貴族的なイメージを重ねていたことに思い至って、いささかうろたえた。 ◆ ところで、あなたはこどものころ、親に「おまえは橋の下で拾ってきたんだよ」と言われたことがありませんでしたか? |
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