MEMORANDUM

 以前『鉄塔 武蔵野線』という小説を読んだことがあって、それ以来、「鉄塔」が近くにあると、なんとなく見上げてみたり、「この鉄塔は何線かなあ」とプレートを読みに近づいたりすることが多くなりました。写真の鉄塔は「駒沢線 40」です。ちょうど周囲が工事中の更地で真下まで行くことができました。ちょっぴり満足。
 『鉄塔 武蔵野線』は日本ファンタジーノベル大賞受賞作で著者は銀林みのる。夏休みに送電線の鉄塔の数字に興味を抱いた少年二人が、近所の「武蔵野線 70」の鉄塔から「武蔵野線 1」の鉄塔をめざして、チャリンコで「冒険」するというお話。鉄塔の写真もたくさんあって、ちょっと変わった体裁の小説です。形態から鉄塔を自己流に「男性型」と「女性型」に分類したりもして。映画化もされたそうですが、残念ながら観てません。映画化にちなんだサイト「鉄塔調査隊」があったので、そこから選評を少し引用すると、

「これまで見ていながら実は見ていなかった風景を、見えるようにしてしまった」という点で、まさに人間の心理的盲点めがけて投じられた一個の文学的爆弾であるのかも知れぬと気づいたのである。(井上ひさし)

鉄塔群は自然の風景の中の異物として、いつも白眼視される存在だった。しかし一度見方を変えると、屹立する巨人にも見え、このごろはやる大観音像よりよほど美しく思えてくる。どうやらこれは、文学の突然変異である。(安野光雅)

 というわけで、鉄塔という「ことば」を聞くと、送電線の鉄塔がまず頭に浮かぶのです。この「駒沢線」はどこに行くのかなあ。

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