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【注文の多い引越屋】  大きなぬいぐるみ

◆ ときどきお客さんの家に、ダンボール箱には到底いらないような大きな大きなぬいぐるみがあることがあって、そんなときには、やや困る。汚れないようになにかでくるんであればいうことはないのだが、お客さん自身もどうしていいかわからないので、たいていはそのまま置いてある。それは仕方のないことだろう。微妙な大きさの場合、箱に押し込もうとすることもあるが、なんだか虐待している気もする。お客さんの目も気になる。だから、こちらもそのまま運ぶことが多い。すこし恥ずかしい。目があり口があるものをダンボール箱と同じようには運べない。軍手は外したほうがいいだろうか? さらには手を洗うべきだろうか? と思ったりもする。でも、たいていは、公平に見て、ぬいぐるみの方が汚れているので、まあいいか、とも思う。大きなゴミ袋にいれてあることもあって、それもまた困ることがある。本当のゴミがはいったゴミ袋が並んだ場所の近くに、そのぬいぐるみが入ったゴミ袋があったりすると、はたしてこれは荷物なのかゴミなのか、と判断に迷う。これはゴミですか、などと訊けるものではない。ほとんどの場合は荷物である。でも一度だけ、おそるおそる確認したら、あっさり 「ゴミです」 と言われたことがある。この大きなぬいぐるみをどんな思い出といっしょに捨てるのだろう? といらぬことまで想像してしまうが、まったく余計なお世話で、引越屋には関係がない。

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