MEMORANDUM

  拾いもの

◆ 1月27日、駒沢通り恵比寿南交差点。なぜだかここにシャルル・ド・ゴール空港行きの切符(RER)が落ちていて、つい拾ってしまった。そしたら、中原中也の詩「月夜の浜辺」を思い出してしまった。

  それを拾つて、役立てようと
  僕は思ったわけでもないが
  なぜだかそれを捨てるに忍びず
  僕はそれを、袂に入れた。

  中原中也 「月夜の浜辺」(『在りし日の歌』所収,青空文庫

◆ 中学か高校の国語の教科書に載っていただろうか。だからよく憶えている。月夜の浜辺で詩人が拾ったものは、ひとつのボタン。ワタシが拾ったものは、真昼間の東京でパリの切符。つながるものはなにもない。

◆ 拾うためにはその前に、だれかがそれを落とさねばならず、あるいはそれを捨てなければならない。どこのだれかもしらないひとの記憶の断片がいまここにあって、それは何も語りはしないのだが……。

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