MEMORANDUM

  電話ボックス

◆ 電話ボックスは何のためにあるのか? 電話をかけるためにきまってるって? では、質問を訂正しよう。電話ボックスのボックスは何のためにあるのか? 他人に通話の内容を聞かれないため。たぶん、そうに違いない。そう思っていた。けれど、コンニチ、携帯電話でところかまわず通話をしているひとたちを見るにつけ、はたしてそうだったのかと、あやしい気もしてきた。かれらにボックスなど必要とは思われない。かれらの空間に公共の場所など存在しない。ボックスが必要なのは、むしろ電話をしていないひと、あかの他人の会話(の半分)を聞かされるのに耐えられないひとの側である。なるほど、電話ボックスのボックスとは、他人の傍迷惑な会話の断片を閉じ込めておく装置であったのかもしれない。電話ボックスなど、もはや、多くのひとにとっては何の利用法もないのかかもしれず、電話ボックスのボックスも、チラシを貼る平面としてしか認識されていないのかもしれない。でも、後生だから、電話ボックスを撤去しないでほしい。より正確には、電話ボックスの電話はなくてもいいけれども、ボックスは撤去しないでほしい。通りすがりの他人の無遠慮な言葉の羅列に疲れたときには、いつでもそこに避難ができるように。電車やバスのなかにもあるとありがたいけれど、そこまでは望まない。

関連記事: