MEMORANDUM
2003年06月


◆ ここ [goo] のデザインをすこし変更したのにともなって、内容自体も手直しする必要があったので、あちこち編集していたら、おやおや4月に書いたものが5月分に組み込まれてしまいました。と思っていたら、ちょうど日付が変わり6月になってしまったので、4月のものが今度は6月の方に移動です。やれやれ。

◆ というわけで、これまでの日付はまったくのデタラメです。まあ日付を参照することもあんまりないだろうから、気にすることもないんだけれども、とりあえずこれ以降の分には手動で日付をいれておくことにします。

◆ 西葛西のように「上から読んでも下から読んでも」同じになる漢字三文字の単語を「山本山ことば」と勝手に呼ぶことにして、ああ、「馬車馬」も山本山ことばだなあ、と。ただそれだけなんですが。

◆ goo 辞書『大辞林 第二版』では、

◇ (1)馬車をひく馬。
  (2)〔馬車馬は目隠しをして、わき見をさせないことから〕他の事を考えたりしないで、一心に働くことのたとえ。
  「―のように働く」

◆ もはや比喩的にしか働かないか、馬車馬!

◆ 日曜日はダービー観戦に東京競馬場に行ったのだが、たまたまパドックで見た馬に 「ヤナギムシ」 というのがいた。ヤマメ、イワナ、ニジマス、ウグイなどの釣り餌になるムシらしい。つい応援してしまいました。

◇ 柳の木の中にいるカミキリムシの幼虫のこと。
はちのこ (蜂の幼虫) を大きくしたような形をしている。

ebi.2ch.net/keiba/kako/1008/10082/1008243163.html

◆ 先日、FM横浜をきいていたら、近頃あちこちの水族館で見かけるようになったクリオネ (和名ハダカカメガイ) が話題になっていて、その学名の由来についても触れていたのだけれど、あっさりすっかり忘れてしまったので、再調査。

◇ このクリオネの学名は 「クリオネ・リマキナ」。クリオネはギリシャ神話の海の女神「クレイオ」からつけられたものだ。女神の名前からつけられた流氷の天使とは、なんともカッコイイじゃないか。しかも、英語では 「シーエンジェル」。彼らは世界共通で 「天使」 なのだ。
www.johos.com/omoshiro/bucknum/20010214A.html

◆ 海の女神クレイオって誰かしら?

◇ その名前はギリシャ神話の 「海の妖精」 であるクレイオに由来しているとされる。
www.sunshinecity.co.jp/content/event/1048085707713.html

◆ 女神ではなくて妖精なのか?

◇ ギリシャ神話の海の妖精、クレイナがラテン語化してクリオになりそこからクリオネと呼ばれたとのこと。
www6.ocn.ne.jp/~genpyou/Keisai/p_tino_crione.htm

◆ クレイオではなくクレイナ?

◇ In Greek mythology, Kleio was a sea nymph and the daughter of Oceanus. Kleio was also the godess of song (musa) and patron of odes, rhetoric and the writing of history. Limacina originates from Latin and means snail like.
www.vattenkikaren.gu.se/fakta/arter/mollusca/opisthob/cliolima/clioline.html

◆ この英文もなんだか怪しい。とりあえず limacina が 「なめくじのような」 という意味であることだけは間違いなさそうだが・・・。というわけで調査終了せず。残念。

◆ 最後に、おまけをひとつ。クリッピー、なかなかカワイイ。

◇ 「クリッピー」 は紋別信用金庫のマスコットキャラクターです。流氷の妖精 「クリオネ」 をモチーフとした可愛らしいキャラクターで、「クリッピー」 の名は一般公募により命名されました。
www.shinkin.co.jp/monbetsu/clippy/clippy.htm

◇ 【ワシントン17日共同】アフリカのナミビアなどで発見されたナナフシに似た小型の昆虫が、「チョウ」や「トンボ」など既知の「目(もく)」には属さない新たな「目」を構成するものであることが、ドイツ・マックスプランク研究所とデンマーク・コペンハーゲン大の研究グループの研究で判明、18日付の米科学誌サイエンス(電子版)に発表された=写真。 / 昆虫の新しい「目」の確認は、1914年に「ガロアムシ目」が確認されて以来88年ぶりという。
www.zakzak.co.jp/top/t-2002_04/3t2002041812.html

◆ と、これは一年前のニュース記事(02/04/18)だが、最近まで千葉県立中央博物館で「マントファスマ展」が開催されていたということを終わってから知った。知らない間にしっかり和名までついてる。

◇  マントファスマ (Mantophasmatodea) は,顔はカマキリ(Mantodea)に体はナナフシ (Phasmida) に似ていることから,カマキリとナナフシのラテン語名をつなげたマントファスマと呼ばれている./ また,昆虫はふつう足先のツメを地面につけて歩くが,マントファスマはつま先を上げてカカトでユーモラスに歩くことからカカトアルキという和名がつけられた.
www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/exhibitions/special_ex/ mantophasma/mantophasma.htm

◆ カカトアルキか、悪くない。

◇ 総武線快速で千葉までそこからタクシー・・・なのだが、タクシーの運転手さんも「・・・え、博物館ってどこだったかな、場所とか分かる?・・・ああ、はいはい。」みたいな感じで、とても世紀の大発見を展示しているとは思えないような地味な扱い。
www2s.biglobe.ne.jp/~noenoe/diary.html

◆ だそうで、もっと前に「マントファスマ展」のことを知っていたとしても行くことはなかったろうけど。とりあえずは千葉県立中央博物館のサイトでも十分楽しめる。とくに「マントファスマ発見物語」というマンガがオススメ。

「Scientific American.com」には研究者たちによるより詳しいレポートが掲載されている。なんでもマントファスマの別名は「gladiator(古代ローマの剣闘士)」だそうで、「グラディエーター」(リドリー・スコット監督)なんてのもあったなあ。観てませんが。

◇ We settled on the scientific name Mantophasmatodea because the animals look like a bizarre cross between a mantis (order Mantodea) and a walkingstick (order Phasmatodea). But among ourselves we took to calling the beasts "gladiators," inspired by their fearsome appearance and the armor that covers them as nymphs.

◆ あと、琥珀に閉じ込められたマントファスマの写真がとてもキレイです。
http://www.mantophasmatodea.de/
http://www.mondialhosting.com/axxon/c-Zapping0073.htm

◆ バンド名の由来なんてのは、それがたとえ本人の口から語られていようと、うかつに鵜呑みにするわけにはいかないが、とりあえず、RCサクセションのギタリスト、チャボこと仲井戸麗一は、『ロックの感受性』(平凡社新書)で、加奈崎芳太郎とのフォークデュオ「古井戸」の名の由来をこう書いている。

◇ 「カッコいいバンド名を考えようぜ。日本語のバンド名もいいよな」と二人で盛り上がったのもその頃だった。ピンク・フロイド→フロイド→フルーイド→古井戸という連想から、自分たちのバンド名を見つけたわけだ。フルーイド(fruid)は「流体」という意味で、「おれたちは定型を持たず、変化しつづけるのだ」みたいなニュアンスを込めたそのバンド名がけっこう気に入っていた。(p.39)

◆ 流れる古井戸というイメージにはちょっと新鮮なものがある。

◆ 蕪村の有名な「春の海 ひねもすのたり のたりかな」という句の「ひねもす」を、こどものころに怪獣かなにかの名前だと勘違いしていた人がいたそうだ。怪獣にしてはなんだか弱そうな名前だけれど、ああ、どこかにいないか怪獣ヒネモス。

◆ と思っていたら、谷山浩子に『ここは春の国』という曲があるらしい。その歌詞はというと、

♪ あれはなんですか あれはひねもすですよ
  ひねもすってなんですか 知りませんか 知りませんね
  春の海 砂浜沿いに ひねもすのたのた
  波のきれいな あわしぶき ひねもすのたのた 打ち寄せる

◆ この歌詞は、彼女がDJをしていたラジオ番組でリスナーから募集したものだとか。今日、海を見た。

◆ たまたま《谷山浩子 プライベート・ページ》にたどり着いて、その「オープニングメッセージ」(更新記録と日記)を読んでいたら、「2003年04月05日」付の箇所に「デイジーカッター」の話があった。

◇ 「デイジーカッター」という爆弾の名前を初めて聞いたのは、アフガン空爆の時でしたが、すごくいやな気分になったのを覚えています。凄まじい破壊力の、大量殺人(それも残酷な方法での)の道具に「デイジー」というかわいらしいニックネームをつける感覚が、今のアメリカ人の(アメリカに限らないだろうけど、特に)戦争に対する感じ方をあからさまに表現していると思いました。
taniyama.hiroko.com/om0301.html

◆ このデイジーカッターという言葉が気になって、いろいろネットで調べてみた。

◇ ちなみに、この爆弾、落ちた後、周囲何キロかを壊滅するという強力な爆弾だそうで、それを花の名前にたとえるとは、軍も考えたものです。
www001.upp.so-net.ne.jp/ketoba/2002/2002-2.htm

◆ 断言はできないけれども、すこし誤解があるのではないかと思う。爆弾の名前はデイジーではない。デイジーカッターなのだから。デイジーなら「かわいらしい」かもしれないが、デイジーカッターではかわいくともなんともない(と思う)。では、デイジーカッターとはなにかというと、それはたとえば野球用語であったりするらしい。

daisy cutter アフガニスタン空爆で米軍が使った広域平地殲滅爆弾のことが同じ名前だと知った。ant killer と同様、日本のゴルフ用語で言うとところの「バッタ殺し」すなわち地を這うような強烈な「根こそぎ」ゴロのこと。
www.mikio-e.com/baseball/bdictionary/bdictionary_d.html

◆ また競馬用語であったりもするらしい。

◇ デイジー・カッターは、アルファベットではDAISY・CUTTERと綴り、デイジーはひなぎく、カッターはそれを切ってしまうものという意味で、「歩行に際して脚を上げない馬」のことをさす。
www2.sundaytc.co.jp/coffee_break/series_report/top/main.asp?article_id=8

◆ ちなみにこの文章は井崎脩五郎によるもので、クライド・コールマンという大金持ちとデイジーカッターと名づけられた馬の話なのだが、なかなかおもしろい。と、それはさておき、このデイジーカッターという言葉、探せばもっとほかの分野でも使われているかもしれない。要するに「根こそぎにするもの」といった意味で、この語がデイジーという花のイメージを喚起することはもはや少ないのではないだろうか。

◇ Known as the "Daisy Cutter" because it was first used during the Vietnam War to clear the jungle so helicopters could land, the BLU-82 is also called "Big Blue."
www.globalsecurity.org/org/news/2001/011107-attack01.htm

◆ デイジーカッターを検索していたら、「American Dialect Society」(アメリカ方言学会)のサイトにたどりついた。この団体は毎年「流行語大賞」(Word of the Year)を発表していて、2001年の「最優秀婉曲語」(Most Euphemistic)にデイジーカッターが選ばれていた。で、いろいろ見てみると、2002年の「最優秀便利語」(Most Useful)に「google」が選出されている。

◇ google (verb) -- to search the Web using the search engine Google for information on a person or thing :
www.americandialect.org/woty.html

◆ 意味は「検索エンジン・グーグルを使って人物や事物の情報をインターネットで検索すること」で、ここでの google は動詞である。日本語は、「グーグルする」か「グーグる」か。また「The Word Spy」では、

◇ To search for information on the Web, particularly by using the Google search engine; to search the Web for information related to a new or potential girlfriend or boyfriend.
www.wordspy.com/words/google.asp

◆ とあって、一般的な用法のほかにも、派生した意味があるようだ。要するに、

◇ デートの前に相手がどういう人か調べて出かけたり、デートしたほうがいいかどうか検索結果から判断したりする
www.asahi.com/tech/person/20010309.html

◆ ということらしい。

◇ フェンネル祭(一年に一度、女の子が好きな男の子に贈り物をするお祭り)
www.moomin.co.jp/html/moomintv/story_4.html

◆ ムーミンに「フェンネル祭」というお祭りのことが出てくるらしい。いったいどんなお祭りなのだろう。

◇ どうでもいいが、joystickというのは日本語に何て訳すのだ?「喜びの棒」か?なんか、とっても下品なような気がするのは、やねうらおだけなのか?(相当の阿呆やな>俺)
www.sun-inet.or.jp/~yaneurao/rsp/rsp40to47.html

◆ その通り。わたしの辞書には「喜悦棒」とありました。「goo 辞書」では、

◇ 〔話〕(航空機の)操縦桿; (機械の)操作レバー; 【コンピュータ】(テレビゲーム用の)ジョイスティック.

◆ 以前、「Wordorigins.org」の discussion board で joystick の語源をめぐる楽しい議論を見た記憶があって、探してみたのだけれど、発見できず。

◆ 先日、新小岩の駅前で「ピリカ」というラーメン屋を見かけて、ふとピリカとはなんだろうと思った。

〔老人ホーム職員のわたしは〕手話コーラスをやっていまして、お年寄りたちに次の歌は何が良いか訪ねたところ、「知床旅情」がいいと言われまして、歌詞を見たところ、「ピリカが笑う」と出てきます。ピリカって妖精か何かでしょうか。
village.infoweb.ne.jp/~fwgd4805/siretoko/clip/index2.html

◆ そう、「知床旅情」の「ピリカが笑う」のピリカ。

◇ 新聞によると、君が代にかわる国家としてふさわしいのは?という調査があったそうで、そのなかに「知床旅情」がけっこう上位なのにたまげました。これって日本の最北東端の歌なのに!
www.siretoko.com/kaze4.html

◆ たしかに「たまげる」話だけれど、それほど日本人に浸透している歌ということなんだろう。こどものころに「遥か国後に 白夜は明ける」という歌詞を聴いて、なんで白夜が明けるのか、とひとりで毒づいていたこともありましたが、北海道で暮らし始めると、その夏の夜明けの早いこと早いこと。ちょっと遅くまで呑んでいるとすぐに空が白み始める。ああ「白夜」はやっぱり明けるものなんだなあ、と妙に納得したりして。そんな思い出もありますが、ピリカがなにかなんて考えたこともなかった。やっぱりピリカって妖精か何かですか?

◇ 【「ピリカ」とはアイヌ語で可愛い女性の事なんです】
www.tanukiya.co.jp/kitty2002p/

◆ と、これはキティちゃんの「ピリカシリーズ」(!)を販売しているサイトより。「諸般の事情により写真掲載が出来」ないそうで残念だが、ピリカは可愛い女性か。

◇ ピリカが笑う・・は女の人だと思います。ピリカメノコを略しているのです。違うかな・・そうだと思うのですが。
village.infoweb.ne.jp/~fwgd4805/siretoko/clip/index2.html

◆ 道南にはピリカという地名もある。桧山管内に瀬棚郡今金町字美利河。

◇ ピリカ・メノコといえばアイヌ語の「美しい女性」だということは良く知られる。 / アイヌ語のピリカ・ペツ(美しい・川)を「美利河」の漢字に置き換えたのは、みごととしかいいようのない先人の知恵だろう。
members.aol.com/pirica2712/sub4.htm

◆ ピリカ峠に、ピリカダム。それからピリカ小学校。

◇ ピリカ小学校は、北海道の道南に位置し、山と森に囲まれた小さな小学校です。全校児童13名、毎日元気に生活しています。今年で山村留学を続けて14年になりました。
school.hiyama.or.jp/imakane/pirikasyo/default.htm

◇ 10年前、休校の危機に立った小さな小学校のたったひとりの児童だった女の子が、全国に向けて出した一通の手紙・・・ 「わたしと一緒に勉強してくれる人いませんか」 そして、学校存続を願う大人たちの情熱。それがピリカ小学校の山村留学のはじまり。
www7.ocn.ne.jp/~s-focus/

◆ ついでに「ピリカ ピリカ」の解説も。

◇ アイヌの歌の中で一番知られているものとして北海道各地で現在にも歌い継がれる。わらべうたもあるが、雪村いずみの歌った芸術祭受賞レコードにより恋の歌として一時期流行歌となり、「ピリカ=美人」の理解が流布した。この曲だけは、アメリカ系の賛美歌がアイヌ式に転化したものと見られる。
www.cam.hi-ho.ne.jp/kousaka/wagner/123rd/upopo.htm

◆ いろいろ話が広がってしまうけれど、ピリカは「美しい」「よい」「すばらしい」といった意味のようで、「様似アイヌ語教室」の教材には、

◇ A:タント・シリ・ピカ(今日・天気・いいね) / B:ピカ・ピカ(いいね・いいね)

◆ とある。ピリカモシリは美しい大地。さらには「美しいクチバシ」の鳥がいて・・・

◇ エトピリカは、北太平洋北部とそれに隣接する海域だけに生息する貴重な鳥です。日本では、霧多布以外では見ることができません。しかも日本のエトピリカは絶滅の危機に瀕しています。エトピリカという名前は、アイヌ語で“美しい嘴”という意味です。
www.hokkai.or.jp/hamanaka/gaiyo/mark_etc.html

◆ これは霧多布のある釧路管内厚岸郡浜中町のページ(写真も同ページより)で、エトピリカは浜中町の町鳥。

◇ ピリカが笑う~・・・のピリカって確か鳥の名前ですよね?
www.siretoko.com/kaze4.html

◆ うん? ピリカは鳥? 鳥といってもまさかペリカンじゃないよね?

◇ 大分前の話です。九州の某放送のラジオを聞いていたら男女ペアのDJが「知床旅情」を放送していました。歌っていたのは森繁久弥だったと思います。この歌の2番か3番に「♪ピリカが笑う…」というのがあります。DJたちはこの有名な歌のこの部分をなぜか「♪ペリカンが笑う…」と理解しているらしく、二人でなぜここでペリカンがででてくるんだろう、と不思議がっていました。いうまでもなくピリカとはアイヌの言葉で可愛い少女の意味です。翌日もまた同じコンビの放送があったから聞いたところ、さんざん電話があったらしく謝っていました。
www.sutv.zaq.ne.jp/shirokuma/goc980103.html

◆ 笑うペリカンも悪くはないが・・・。そうして「ピリカ=可愛い少女」説も根強いようだけれど・・・

◇ 詩の内容から考えるとエトピリカ(鳥の名前)のことをさすのではないかと思います。〔中略〕 エトピリカが空から笑っているということではないでしょうか
village.infoweb.ne.jp/~fwgd4805/siretoko/clip/index2.html

◆ なるほど、笑っていたのはオマエだったのか、エトピリカ!

♪ 今宵こそ君を 抱きしめんと
  岩陰によれば ピリカが笑う

◆ せっかく北海道で暮らすことになったのだからと、大学に入学した当初は、ぜひアイヌ語の勉強もしてみよう、などと殊勝な考えを抱いていたことがあった。しかしこの計画は挫折のずいぶん手前で忘れ去られ、数年が経ち、なにひとつ身につけることなく北海道を後にした。その後、何度か北海道を訪れ、それが馬好きの友人とであったりすると、その目的地は当然日高になる。そんなときには、いかにも関心がなさそうな相手を無理やり引き連れ、静内のシャクシャイン像まで足を運んだ。それはある意味「墓参り」のようなものだったと思う。

◇ 道内では羊ケ丘のクラーク像,真狩の細川たかし像と並んで有名な立像。
www.onitoge.org/tetsu/hidaka/14shizunai.htm

◆ これがシャクシャイン像の説明。なるほどそうかもしれない。真狩の細川たかし像は見たことがないけれども。とにもかくにもシャクシャインはアイヌの英雄であった。最後の。

◇ ・シャクシャインの戦い  沙流地方と静内地方のアイヌの狩猟採集の場(イオル)をめぐる争いに端を発し、アイヌ民族と松前藩の争いとなり、1669年、静内のシャクシャインが現在の白糠から増毛の辺りのアイヌの人々と一斉に立ち上がった。戦いは互角で和ぼくとなったが、酒宴の席上でシャクシャインは謀殺され、アイヌ軍は破れた。
www.aurora-net.or.jp/~dii/hon/hon-7.htm

◇ この戦いの後、松前藩は各地のアイヌに対し、子々孫々まで刃向わないという起請文を強要する。
www.alles.or.jp/~tariq/kampisosi/historyTopteeta.html

◆ アイヌの言語学者である知里真志保は『アイヌ民譚集』(岩波文庫)の「後記」にこう書いている。ちなみに岩波文庫でのアイヌ文学の分類は「赤帯」、すなわち海外文学の扱いである。

◇ 私が一高へ入った当時、物見高くして傍若無人な、そしてデリカシイなどはむしろ無きをもって得意としているかのごとき一高生は、田舎から出て来たばかりの、それでなくてさえ或る種の引け目から始終おどおどしていた私を包囲して、「熊の肉や鮭の肉を主食として育った君が、こちらへ来て米の飯ばかり食べていて体に何ともないか」とか、「口辺に入墨をした娘を見慣れた眼に、日本娘はシャンに見えるかい」とかいった類の、取りようによっては随分と痛い質問を浴びせては、気の弱い私をひそかに泣かしめたものであった。[p.165]

◆ そうして昨日、ピリカについて検索していたら、アイヌの女子中学生の「差別」と題された作文に目が向いた。

◇ その差別のせいで「仲間はずれ」も多く、私も その中の一人で 私のおじいちゃんは、アイヌ語ペラペラの「アイヌ」だったのですが 今私は みんなに アイヌアイヌと言われています。そう言われるだけなら まだいいと思っては いますが アイヌ人だから どうだこうだ と言われるのが、私はたまらなく いやです。例をいえば 私のために 芽中の三年生が かえ歌を 二曲 つくったりしています。一つは ランナウェイのふしで「アァイヌゥー アーイヌ アーイヌゥー ア ッ イ ヌゥー」とか ピリカピリカのふしで「アーイヌ アーイヌ なーぜなーぜ アッ イッヌッ いーぬにかまれてアーイーヌ……」とかがあります。私が三年生の前を通ると 五、六人が この歌を 大声で 歌うのです。
web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/yaziuma/yazitu27.html

◆ もちろんこの引用は全文ではない。しかも「まだまだ ぜんぶの例をあげてみれば この原稿用紙が 百枚あってもたりないかも しれません」ということなのだから、この作文をすべて読んでもなお足りないのかもしれないが、時間があれば全文を一読されることをぜひお勧めしたい。テキストは学級通信のかたちで高校教師の方が書かれた「野次馬通信」に収録されている。「870424」というのが日付だろうから、十五年ぐらい以前のものであるが、現状ははたしてどうなっているのだろうか。

◆ 今しがたバスで帰宅したところです。いつもはバスの前方に乗るのですが(一人掛けの座席が多いため)、先ほどは後ろの方に座っていました。降りるバス停が近づいて、だれかが降車ボタンを押したとき、ほどよく空いていた車内の暗がりに、小さな赤い明かりが点々と灯りました。なんだかそれはホタルのようで、不思議な気分のままバスを降りたのでした。

◆ そういえば、昨日 GOO の新着日記で、ホタルが登場するのをふたつ読んだばかりで、ウチはホタルが「ブンブン」飛ぶほど田舎だ、というのがひとつと、ホタルってゆっくり飛ぶんだなあ、というのがひとつ。それぞれ一行ほどの文章でしたが、なんとなく心に沁みました。
◆ ホタル、しばらく見てないなあ。手にしたマウスの裏側はホタルのように光っているけれど・・・

◆ 『週刊文春』(6月12日号)を拾い読みしていたら、「家の履歴書」にいまや懐かしいフィリップ・トルシエが登場していた。都立大学のアパルトマンを日本の旅館風にアレンジしてして住んでいたそうで、またパリの現住居もすこし日本風に改装したそうだが、そんなことより、つぎの発言に興味をそそられた。

◇ またなぜか自分には黒人の血が流れているという、強い思い込みもありました。2番目の弟が生まれるとき、母が黒人の赤ん坊を産むとばかり思っていて、アフリカへの憧れは、その頃からあったんでしょう。[p.72]

◆ 自らの運命に逆らうことなく十年近い歳月をアフリカで過ごし、「白い呪術師」として畏れられたトルシエ。

◇ 飢え、渇き、叫び、ダンス、ダンス、ダンス、ダンス!
アルチュール・ランボー「悪い血」

  月虹

◆ 電車のなかで、新聞を ―といってもスポーツ新聞だが― 読んでいたら、芸能欄に、

◇ 歌手さだまさし(51)がデビュー30周年記念ツアー「Moon-Bow at the 30th」の8夜連続コンサートの模様を収録したライブCDBOX「月虹 over the Moon-Bow」全24枚を7月23日に発売することが18日、分かった。
『日刊スポーツ』(06/19)

◆ とあった。さださんもダスキン問題でたいへんだろうな、さて「月虹(Moon-Bow)」か、これは一体なんて読むのだろう、など考えつつ、家に帰ってメールを見たら、木曜発行のメールマガジン「ざつがく・ザツガク・雑学」が届いていて、今号の特集が「虹」だった。
 思い起こせば、このメールマガジンを購読 ―無料だから「購」読ではないか― し始めたキッカケもやっぱり虹だった。あれはいつだったか、このまえ虹を見たとき、虹のコトでも書こうかと思ってグーグルしていたら、偶然に出合ったのだった。話を元に戻すと、Moon-Bow とは、

◇ 月の光で見える、夜の虹のことです。月明かりですから光量が少ないので満月の頃、条件が良いと見えるそうですが、色は淡く白っぽいとか。 / ハワイのマウイ島には、見た人には幸せが訪れるという言い伝えのあるmoonbowの名所があるそうですよ。(「ざつがく・ザツガク・雑学」[Vol.183])

◆ で、「月虹」はなんと読むんだろうか?

◆ 先日、早稲田大学正門あたりを歩いていたら、「雄弁会」の看板を見かけた。早稲田の雄弁会といえば、歴代首相を輩出している弁論サークルだが、グーグルしていると、『週刊金曜日』のサイトに佐高信の文章があった。かれによれば、「雄弁会出身者に共通するのは、その思想、哲学のなさである」そうで、

◇ それは、小さいころから、「お嫁さんになりたい」と願い、長じて、メデタク、“お嫁さん”になって、さて、何をすればいいかわからず、ただ毎日、忘れずに化粧だけはしている女性に似ている。
www.kinyobi.co.jp/old/fusoku_oldf/311

◆ 雄弁会について書くべきことはなにもないのだけれど、なんとなくこの比喩のイメージが気になったので書いている。(この項つづく)

◆ あるサイトの日記を読んでいたら、「メルモちゃん」の文字が目に留まった。いつだったか、カラオケで何かの拍子に『ふしぎなメルモ』の主題歌を歌ったことがある。最後の方になると、歌詞がわからないので(忘れたのか? いや最初から知らないんだろう)、字幕を見ながら歌ったのだが、

♪ メルモちゃん 優しい ママになったよ
  ほほえみながら 運ぶものは しあわせ

  出原千花子、ヤング・フレッシュ 「ふしぎなメルモ」(歌詞:岩谷時子)

◆ という歌詞がなんだか胸に沁みた。自分も歳をとったのと同じように、メルモちゃんも歳をとり、いまではママになっちゃったんだな、と思ったのだ。

◆ こどものころに見たテレビアニメの主人公たちはみないまごろどうしているんだろう? みんなおとなになって生活に追われていたりするのだろうか? そういえば、ハッピーエンドの映画を観たあとには、いつでも「その後」が気に懸かっていたことがあった。ひとはだれでも人生の最高のときがあるんだろうけど、その後は?

◆ なんてことをメルモちゃんの歌を聴くたびに思い出して(なぜだかこのパソコンにも入っている)、なんともいえない気分になったりしていたのだけれど、ついさっき歌詞検索サイトで歌詞をよく読んでみたら、二番が若返る「赤いキャンディー」のことで、三番が歳をとる「青いキャンディー」のことという構成になっていて、先に引用した部分の前には、

♪ メルモちゃん メルモちゃん メルモちゃんが食べた
  青いキャンデー 大人になって どうするの

◆ とあって、これはこどものメルモちゃんが青いキャンディーを食べておとなになった、というテレビの世界どおりの「単純な」ことなのでした。

◆ それでも、やっぱりメルモちゃんも自然に成長して、青いキャンディーなしでも、りっぱなおとなになったんだろう。どうか「おとなになったメルモちゃん」が赤いキャンディーばかりに手を出していたりしませんように・・・。そんなおとなになってたりしませんように。

◆ パソコンのハードディスクにでたらめに突っ込んだ音楽ファイルを流しっぱなしにして聴くともなしに聞いていることがある。で、いまさっき原田知世の『地下鉄のザジ』が流れていて(これは図書館で借りてきたCDかなにかだったか?)、「地下鉄のザジ」のことが気になった。そもそもこの曲にはどうしてこのタイトルがついているんだろう? よく考えたら、だれが作詞作曲したのかも知らない。と書いてるあいだに、大貫妙子だということが判明して、大貫妙子についてもいろいろ書きたくなるがそれはガマンするとして、この曲ができるきっかけはなんだろうと考えると、映画を観たので「感想文的に」歌を作ってみた、といったところだろうか。それとも、劇かなにかで、テーマ曲を依頼されたりしたのだろうか。

◇ 地元の名古屋テレビが放映していた『ブンブンとバンバン』という番組を私はよく見ていた。『お母さんといっしょ』、『ピンポンパン』、『ポンキッキ』のような幼児番組なのだが(出演したこともある)、その番組の中の連載人形劇のコーナーに「地下鉄のドジ」というコーナーがあった。
www.geocities.co.jp/MusicHall/1525/essay/2001/zazie.htm

◆ わたしは名古屋出身ではないので、こんな番組は知らないけど、とにかくこの名古屋出身のひとがいうことには、

◇ 幼少時の記憶の中の「地下鉄のドジ」、そして原田知世が歌う「地下鉄のザジ」という曲がキッカケで、本当はフランスの映画に『地下鉄のザジ』という映画があることをはじめて知り、初めて原典の映画を観たのが大学の頃。

◆ こんな感じの「出合い」はわりとよくあることかもしれませんね。で、わたしが映画の『地下鉄のザジ』でよく憶えているのはザジがムール貝をむしゃむしゃ大食いするシーン。あとはあんまり憶えてないなあ。記憶って不思議だ。『地下鉄のザジ』といえば、ルイ・マルの映画を連想するのがふつうだろうけど、もちろん原作になったレイモン・クノーの小説『地下鉄のザジ』もあって、これは生田耕作訳が中公文庫にあった(いまでもあるかな?)。

◇ 生田耕作の稀代の名訳「けつ食らえ」でおなじみの『地下鉄のザジ』[・・・・・・]
members.jcom.home.ne.jp/zazie/contents/mayonaka03b.htm

◆ たしかに映画でも「ケツクラエ」を連発していたような・・・。まあ、眉を顰めるひとも多いでしょうが・・・。

◇ ザジが連発する決め科白も、和訳の<ケツくらえ>じゃねえ、いつの時代でも笑えないな。
www.aw.wakwak.com/~w22/58.htm

◆ では原文のフランス語で読めばおもしろいのかというと、まあもちろんそれはひとそれぞれなわけで・・・

◇ この本は好きじゃありませんでした。ストーリーがおもしろくないんです。[・・・・・・]このストーリーはとても長くって、退屈します。
www.lyceendm.net/cdi/zazieraymond.htm

◆ とは、フランスの女の子ミリアムちゃんの読書感想文でした。

◆ あと、もうひとつ。ジェーン・バーキンが歌っている曲に「Zによる問題集」(セルジュ・ゲーンズブール作詞作曲)というのがあって、この歌詞には「ザジズゼゾ」の発音のはいっていることばがちりばめられているのだが、これにも Zazie が「主人公」として登場している(歌詞は http://www.caritas.ac.jp/chansons/b/birkin1.html で読める)。

◆ さらに追加。

◇ パリに到着したザジがストのせいで地下鉄に乗ることを阻止されるとき、小説は、地下世界には潜らないことを、つまり、地上を、現実世界を物語展開の場とすることを宣言する。
www010.upp.so-net.ne.jp/east-end-talk/text/zazie.doc

◆ これは論文の一節。なるほどなるほど。でもパリのメトロも地下ばっかり走ってるわけじゃないしなあ、などとまた余計なことを・・・

◆ あるひとからのBBSへの書き込みで、わたしは自分が Saturnian であることを初めて知った。ホームページを開設してからというもの、わたしは Saturnian であったのだが、そうして最近ようやくこの名前にも慣れてきたところなのだが、わたしは自分が Saturnian であることをまったく知らなかったのだった。そうか、わたしは Saturnian であったのか!

◆ あらためて自己紹介をしておくと、わたしは Saturnian。日本語にすれば土星人(でも、できれば「どせいびと」と読んでほしい)。

◇ いいところ: 名誉、プライドを重視 正義感が強い 理想主義者
 悪いところ: 潔癖すぎてかた苦しく、世渡りはうまくない

www2.justnet.ne.jp/~pxb07556/rokusei/uranai.htm

◆ なるほど、なるほど。その通り? これが「六星占術」というものだそうです。いや、それにしても火星人や金星人じゃなくてよかったよかった。あやうくサイト名も変えなきゃいけなくなるところでした。(Charis さん、教えてくれてどうもありがとう)